排痰体位が褥瘡好発部位へ及ぼす影響

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抄録

【はじめに】体位排痰法は、気道内分泌物の除去と酸素化の改善に有効な治療法であるが、実際の排痰体位は、褥瘡予防の点から推奨されている30度側臥位よりdynamicな肢位であり、身体的負荷が高いことが予想できる。また、褥瘡は毛細血管閉塞圧である32mmHgを超えると褥瘡発生危険性が高まるといわれている。しかし、排痰体位が褥瘡に与える影響は定量的に評価されていない。<BR>【目的】排痰体位が、褥瘡好発部位に与える影響を体圧測定により定量的に検討することとした。<BR>【方法】研究に同意を得られた健常者20名(男10名、女10名。年齢28.2±4.2歳。BMI21.5±2.5)を対象とし、宮川の「修正した排痰体位(背臥位・腹臥位・側臥位・45度側臥位・135度側臥位)」と30度側臥位での褥瘡好発部位(各肢位3箇所)の体圧を簡易式体圧測定器モルテン社製PREDIAで測定した。測定部位は、各肢位の褥瘡好発部位からパイロット測定で高値を示した3箇所を抽出した。測定は各部位5回測定し最大・小値を除いた平均値を各肢位で比較した。また、測定は硬質の床面および木製斜面台で施行しマットへ分散する圧の影響を除去した。次に、マット(PARAMOUNT BED フレックスマットKE605)による圧分散を考慮するためマットの実測値を床面の実測値で除したものを圧分散係数とした。<BR>【結果】背臥位で仙骨170.6±11.1mmHg・踵骨112.0±24.9mmHg、腹臥位で膝蓋骨158.3±23.5 mmHg・側臥位で肩峰138.0±24.2 mmHg・大転子161.1±26.5 mmHg、45度側臥位で肩甲骨外側縁67.2±18.0mmHg・大転子136.2±35.8 mmHg・踵骨143.0±21.8mmHg、135度側臥位で肩峰115.8±27.0mmHg・上前腸骨棘96.8±53.3mmHg・大腿骨内側上顆128.9±22.7 mmHg、30度側臥位で大転子99.6±32.1mmHg・踵骨142.2±20.8mmHgであった。加えて、上記の値をマットの性状を考慮した圧分散係数で換算した場合においても全ての部位で32mmHgを超えた。<BR>【考察とまとめ】<BR>排痰体位における褥瘡好発部位の圧を測定した。全ての肢位において毛細血管閉塞圧を超える値がみられた。特に側臥位・45度側臥位・135度側臥位は床面へ接触面積が少ないことから高値を示したと考える。体位変換は原則2時間毎とされているが、体位排痰法を必要とする集中治療領域では、循環動態が悪い場合に短時間でも褥瘡好発部位に発赤の出現が我々の経験上みとめられている。よって、体位排痰法は事前の褥瘡危険因子のアセスメントと共に褥瘡好発部位への除圧及び積極的な体圧分散寝具の使用が望まれる。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2004 (0), D0742-D0742, 2005

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680540198144
  • NII論文ID
    130005012880
  • DOI
    10.14900/cjpt.2004.0.d0742.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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