立位における骨盤後傾角度変化が大腿二頭筋、大腿筋膜張筋および内側広筋の筋積分値に及ぼす影響

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【はじめに】骨盤後傾、膝関節屈曲・内反を呈する変形性膝関節症(膝OA)患者において、大腿二頭筋短頭(BFS)や大腿筋膜張筋(TFL)の過緊張や圧痛を経験することがある。そのような症例に対し骨盤後傾角度を減少させた結果BFS、TFLの改善を認めた。そこで今回、骨盤後傾角度変化によるBFS、TFLおよび内側広筋(VM)の作用について筋電計を用いて検討した。<BR><BR>【方法】対象は健常男性7名で、まず安静立位(骨盤前後傾中間位)で、筋電計ニューロパック(日本光電社)を用いて大腿二頭筋長・短頭重層部位(BF)、TFLおよびVMの筋積分値を10秒間、3回測定した。次に骨盤中間位にて膝関節屈曲角度を10、20、30、40度まで変化させ、上記と同様に測定した。また骨盤後傾によるBFS、TFLおよびVMの作用を明確にするため、それぞれの膝関節屈曲角度にて骨盤を最大後傾させ同様に筋積分値を測定した。さらにそれぞれの膝関節屈曲角度での骨盤最大後傾角度と、それに伴う膝関節内反角度も測定した。この時、2個の体重計を足底の前後に置き骨盤位による前後方向の足底圧を一定とした。なお対象者には研究の目的・方法を説明し了解を得た。<BR><BR>【結果】骨盤中間位における膝関節屈曲角度の増加に伴い、BF、TFLおよびVMの筋積分値は増加傾向を認めた。骨盤後傾時においてBF、TFLおよびVMの筋積分値は増加傾向を認め、測定3筋の筋積分値は骨盤中間位よりも大きかった。また骨盤最大後傾角度および膝関節内反角度は膝関節屈曲角度の増加に伴い増大した。<BR><BR>【考察】骨盤中間位での膝関節屈曲角度の増加においてBFの筋積分値が増加傾向を示すのは、膝関節屈曲に伴う股関節屈曲および下腿前傾保持に関与し、TFL、VMにおける増加傾向は、膝関節屈曲保持に関与したと考える。佐保らは骨盤後傾による股関節外旋の増大は膝関節に内反の力が作用するとし、石井らは内反を伴う膝OA患者の脛骨と大腿骨の解剖学的配列の正常化にはVM、膝窩筋およびBFSが重要であるとしている。これらより膝関節屈曲角度を増加させた際の骨盤後傾位におけるBFの筋積分値が骨盤中間位より増加傾向を示すのは、骨盤後傾による股関節伸展作用と膝関節屈曲による下腿前傾保持作用という長頭の作用に加え、膝関節内反の増大に対し外反方向への作用にBFSが関与した結果と考える。またVMにおいても、膝関節屈曲保持作用に加え、内反に対する外反作用に関与したと考える。またTFLの筋積分値が骨盤中間位より後傾位で増加傾向を示すのは福井らは、TFLは脛骨を外方移動させ膝関節を内反させると報告しており、膝関節屈曲保持作用に加え、膝関節の内反作用に関与した結果と考える。<BR><BR>【まとめ】本研究結果より膝OA患者が呈する骨盤、膝関節の諸問題はBFSやTFLの働きを考慮して骨盤後傾角度に注意する必要があることが示唆された。<BR><BR><BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), A0681-A0681, 2006

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

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