大腰筋と重心動揺の関係について

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抄録

【はじめに】<BR>近年、大腰筋が立位時の重心安定に関与するとの報告が散見される。しかし、立位時の重心の安定性は様々な因子により規定されることが考えられ、大腰筋と重心動揺の直接的な関連について明らかにした報告は少ない。今回我々は、大腰筋と重心動揺との関係について、その断面積と重心動揺との関係を検討したので報告する。<BR>【目的】<BR>大腰筋の断面積と重心動揺との関係を検討する。<BR>【対象】<BR>下肢・体幹に問題を有しない健常成人10名、男性7名、女性3名、平均年齢27.4±4.7歳を対象とした。<BR>【方法】<BR>大腰筋の断面積をMRIにて評価した。MRIはTOSHIBA製FLEXART0.5Tを使用した。撮影条件はT2強調画像(TR=4200・TE=120)で行い、仰臥位、水平断で第1腰椎から第1仙椎までの各椎体および椎間板の中央部を撮影した。MRI画像上の左右の大腰筋をコンピューター上でマーキングし筋の断面積を測定した。測定した各スライスの断面積の総和を算出した。<BR>またアニマ社製グラビコーダを使用し、重心動揺検査を行った。閉眼・自然立位を取らせ、サンプリングタイムは30秒とした。<BR>大腰筋の筋断面積総和と重心動揺検査の各パラメーターとの関係をピアソンの相関係数検定を用いて検討した。危険率は5%水準をもって有意とした。<BR>【結果】<BR>筋断面積総和の平均は、大腰筋が225.2±63.7cm2であった。重心動揺検査の各パラメーターとの関係は、重心線の前後移動距離の平均値および重心線の前後移動距離の中間値とで有意な相関関係(p<0.05)を認め、相関係数はそれぞれ0.71・0.68であった。<BR>【考察】<BR>今回の検討では、大腰筋の断面積総和と重心の前後方向への動揺との間で相関関係が認められ、大腰筋の断面積総和が大きくなるにつれ、重心の前後方向への動揺が少なくなるという結果となった。このことは大腰筋が姿勢制御に関して重要な規程因子であり、特にその前後方向に限定した姿勢制御を行うものであると考えられる。<BR>【まとめ】<BR>1)MRIを用いて計測した大腰筋の断面積総和と重心動揺検査の各パラメーターについてその相関を検討した。<BR>2)大腰筋の断面積総和と重心線の前後移動距離の平均値および重心線の前後移動距離の中間値との間に有意な相関が認められた。<BR>3)大腰筋は身体重心前後方向の制御因子として重要であると考えられる。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2004 (0), A0071-A0071, 2005

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680540339840
  • NII論文ID
    130005012040
  • DOI
    10.14900/cjpt.2004.0.a0071.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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