肩関節周囲における体表からの硬度評価

  • 山口 光國
    昭和大学藤が丘リハビリテーション病院リハビリテーション部
  • 大野 範夫
    昭和大学藤が丘リハビリテーション病院リハビリテーション部
  • 筒井 廣明
    昭和大学藤が丘リハビリテーション病院整形外科

説明

《はじめに》われわれは、体表からの硬度を評価する方法として、個々の脂肪量を反映すると言われる上腕二頭筋、上腕三頭筋部における体表からの硬度の値を基準値とし比較する、身体の硬度分布から評価する方法を考案し、その客観性、有用性について検討したので報告する。 《対象》対象は、健常成人18例(男性14例、女性4例)36関節(以下、健常群)、年齢11-37歳、平均26.3±7.8。比較対象として、自覚的に肩こりを訴える一般成人9例(男性4例、女性5例)16関節(以下、肩こり群)、年齢21-66歳、平均39.0±12.3とした。《方法》体表からの硬度計測部位は上腕二頭筋筋腹部・烏口突起内側部(大胸筋部)・上腕三頭筋筋腹部・頚傾斜部(僧帽筋上部)・肩甲骨内上角内側(菱形筋部)・第3腰椎棘突起外側(体幹伸展筋部)の各部位とした。計測肢位は上腕二頭筋部、大胸筋部が仰臥位にて、他の部位については、頚椎が伸展位とならないよう枕をあてがった腹臥位にて計測した。硬度の計測は井元製作所製、筋弾性計PEK‐1を用い、各部位を3回計測し、計測した値の平均値を各部位の硬度とした。健常群における得られた計測値をもとに上腕二頭筋、上腕三頭筋部の硬度を基準とし、他の部位における硬度との関係を統計学的に調査した。さらに、肩こり群においても同様の調査を行った。次に、上腕二頭筋、上腕三頭筋部と他の部位との硬度差を算出し、健常群、肩こり群における値を各部位ごとに比較し、臨床上において上腕二頭筋、上腕三頭筋部を基準とした硬度評価の有用性を検討した。《結果》上腕二頭筋・上腕三頭筋部における硬度と、他の部位における硬度との関係を調査した結果、健常群において二頭筋・三頭筋部と他の部位における筋硬度とは非常に相関が高く、また左右での有意差は認めなかった。上腕二頭筋・上腕三頭筋部における硬度と他の部位における硬度差について調査した結果では、健常群において、上腕二頭筋・上腕三頭筋部の硬度に対し、大胸筋部および菱形筋部は有意な差を認めた(p<0.01)。両群間での比較では健常群に対し、肩こり群の菱形筋部硬度が有意に高い傾向を示していた(p<0.01)。また、自覚的に肩こりを感ずる部位は僧帽筋部6関節、菱形筋部14関節であり、自覚のある対象部位を抽出し健常群と比較すると僧帽筋部・菱形筋部とも有意に高い値を示していた(p<0.01)。《考察》これまでは、体表硬度が身体症状のひとつとして重要であることは理解されていたものの、評価としては評価者の経験的な感覚による判断、ないしは症例の自覚に依存し判断するにとどまっていた。しかし、今回の結果から、上腕二頭筋・三頭筋部の両部における体表からの硬度が他の部位と比較するための基準となりうることが示唆され、硬度の変化を明確に確認できるものと期待される。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2002 (0), 579-579, 2003

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680540443136
  • NII論文ID
    130004577252
  • DOI
    10.14900/cjpt.2002.0.579.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ