ハローベスト(頸椎固定装具)が静的・動的姿勢制御に及ぼす影響

Description

【目的】高齢者の転倒予防は介護予防の観点からも重要である。高齢者は身体の柔軟性の低下により静的バランス、動的バランスの低下が起こりやすく、身体活動を一時的であっても制限する装具装着により高齢者ではバランス低下が起こり転倒につながる恐れがある。頚椎の術後には頚椎を確実に固定する目的でハローベストがよく使用される。そこで、ハローベスト装着が静的・動的姿勢制御に及ぼす影響を若年者群と高齢者群で調査した。<BR>【対象と方法】 調査の目的と方法を説明し、了解の得られた若年健常男性15名(年齢21.1±3.1才)と、特記すべき疾患を有せず、現役で働いている高齢健常男性10名(66.1±3.1才)を被験者とした。<BR>健常者にハローベストを直接装着することは不可能なので頭部固定部分の螺子釘を除去し、頭部にヘルメットを着用し、あご紐を強く締め、ヘルメットとハローベストの支柱をマジックテープで接着してハローベストの効果とほぼ同様な頚椎固定力が得られるようにした。<BR>姿勢に及ぼす影響は足圧中心測定器であるアニマ社製重心動揺測定装置(G6100M)を用いて1)安静立位時、2)ハローベストを着用し、頭部固定無しでの立位時、3)ハローベストを着用し、頭部固定での立位時の30秒間重心動揺測定を行った。それぞれの条件にて重心測定装置の上に直接立位した時と、不安定板(酒井医療社製Balance Pad : AIREX)の上に立たせた時の2条件にて開眼と、閉眼での合計12回測定した。測定は1)、2)、3)の順に行い、若年者群と高齢者群に分けて比較検討した。比較項目は総軌跡長、X・Y方向軌跡長、矩形面積、外周面積、実効値面積とした。<BR> なお、統計学的処理にはstat-view ver.5.0を使用した。若年者群と高齢者群の比較にはmann-whitneyのU検定を、装具の有無による比較にはwillcoxonの符号付順位検定を行い危険率5%未満を有意とした。<BR>【結果】高齢者群では若年者群と比較してすべての測定条件で総軌跡長、Y方向軌跡長が有意に延長していた。<BR>装具の影響は若年者群ではなかったが、高齢者群の閉眼時において装具装着により総軌跡長が有意に延長していた。不安定板の影響は高齢者群で強く現れていた。<BR>【考察】Williams J.G.らは頚椎カラーを用いて同様な実験を行い、頚椎カラーの有無により高齢者も若年者も重心動揺に差は無かったと報告している。長谷らは健常な若年者群において頚椎固定装具の違いにより動的姿勢制御に有意差は認められなかったとしている。<BR>今回、我々は高齢者の閉眼時においてのみ装具の影響が認められた。この事は高齢者では頚椎が強固に固定され、視覚の代償が閉ざされると立ち直り反応が低下し転倒の危険性が高まると考えられる。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680540497920
  • NII Article ID
    130004578130
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.c0284.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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