地域在住高齢者における一年後の最大歩行速度の比較検討

説明

【目的】我々は、2004年より山形県Y市と共同し介護予防に効果的な問題点の解明を図る目的で身体機能計測を実施している。高齢者が自立した生活を送る上で移動手段は必要不可欠であるため歩行能力の加齢変化は重要である。歩行能力について年齢別に比較した報告は多いが、同一者の一年後の変化を比較した報告は少ない。そこで高齢者の基礎的運動能力を代表しうるとされる最大歩行速度を用いて、1年間の最大歩行速度の経過を比較検討した。<BR>【方法】Y市に住所のある在宅高齢者132名(男性42名、女性90名、平均年齢72.4 ±4.7歳)で、介護認定を受けておらず歩行が自立している者を対象とし、10m最大歩行速度、歩数を計測した。試行は歩行を3回行い、得られたデータより1分あたりの最大歩行速度(m/min)、ケイデンス(steps/min)、ステップ長(m)を算出した。これらのパラメーターについて2004年と2005年の値を比較した。さらに、年代別に1群(60-64,n=12)、2群(65-74,n=80)、3群(75-84,n=40)の3つの群に分け、同様の比較を行った。統計処理にはt検定を用い、有意水準を5%とした。<BR>【結果】2004年歩行速度の平均は116.2±20.9m/min,ケイデンス171.6±33.3steps/min,ステップ長0.68±0.08m,2005年歩行速度の平均は109.3±21.4 m/min,ケイデンス164.8±22.1steps/min,ステップ長0.66±0.07mであった。2005年のパラメーターは2004年の3つのパラメーターに比べ、有意な低下が認められた(p<0.05)。群別にみると、1群、3群では全項目で有意な差は認められなかったが、2群において歩行速度とケイデンスが有意な低下を示した(p<0.05)。また、年齢と歩行速度の関係をみると、2004年に比べ2005年のデータの方がより強い負の相関を示した。そのため、2005年のデータを用いて各年代での最大歩行速度の平均を算出した。歩行速度の平均は、男性では60歳代120.0±27.7,70歳代110.6±27.2,女性では60歳代113.3±18.4,70歳代104.1±15.7,80歳代97.0±32.1となり、宮原らの報告に類似した結果が得られた。<BR>【考察】在宅高齢者において1年間で歩行速度、ケイデンス、ステップ長の低下が見られ、年齢とも負の相関が認められたことから、健常であっても加齢による歩行能力の低下が明らかとなった。今回の研究では、特に65~75歳の前期高齢者で最大歩行速度の明らかな低下が認められた。これは退職等によりライフスタイルが変わる時期であることに加え、身体的にも老化が進行し運動量が急速に低下する高齢者も多く含まれていたのではないかと考える。したがって、介護予防として前期高齢者に目を向ける必要があると考える。今後、別の観点からも考察を加えさらに検討を重ねていきたい。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), E1164-E1164, 2006

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680540550784
  • NII論文ID
    130004579695
  • DOI
    10.14900/cjpt.2005.0.e1164.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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