膝伸展筋における徒手筋力検査法の問題点
書誌事項
- タイトル別名
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- 徒手筋力検査と等尺性膝伸展筋力の関係
説明
【はじめに】膝伸展筋力は高齢者の歩行能力との間に密接な関係がある。その測定には徒手筋力検査(以下MMT)が最も簡便で、広く用いられている。しかし、MMTの測定値から歩行に影響を与え得る筋力水準であるか否かなど、詳細に考察することは困難である。そこで本研究では、膝伸展筋におけるMMT値と等尺性筋力値の関係を明らかにし、MMTの問題点を検討することを目的とした。【対象と方法】対象は65歳以上の高齢患者133名227脚(平均年齢76歳)である。その対象に膝伸展筋MMTと等尺性膝伸展筋力を同時期に測定した。MMTの測定はGrade 3以上を対象として、Grade3、3+、4-、4、4+、5-、5の7段階に分類した。抵抗は全てfull arc法で行った。等尺性膝伸展筋力の測定は、アニマ社製μTasMF-01を使用した。測定肢位は端座位で下腿下垂位とした。その最大値(kg)と体重で除した値(kg/kg)を採用し、得られた結果から、MMTの問題点を検討した。【結果と考察】MMTの各Gradeにおける等尺性膝伸展筋力(kg)はGrade3から5の順に6.0±2.3、10.9±2.5、13.0±3.1、13.3±3.2、14.6±3.4、18.7±4.8、29.7±8.5であった。膝伸展筋MMT値はそのGradeが高くなるにしたがい、等尺性膝伸展筋力は有意に高値を示した(p<0.01)。各Gradeにおける測定値のばらつきは、Grade3では小さく、高いGradeになるにしたがって大きくなった。これらのことよりMMT値は膝伸展筋力の多寡を比較的良好に反映している反面、検者の主観的要素が関与するGradeにおいては、測定値のばらつきが大きくなることが明らかとなった。 次に、膝伸展筋MMT値を歩行自立に必要な等尺性膝伸展筋力との関係から検討した。同機種を用いた先行研究から、運動器疾患のない高齢患者において歩行自立症例の膝伸展筋力の最低値は0.28Kg/Kgであり、0.40 Kg/Kg以上あれば全例歩行自立が可能であった。この値と今回の測定値(体重比)を比較した場合、Grade3+(平均値0.23Kg/Kg)以下の症例では、その多くが歩行自立に必要な最低の筋力値には不十分であった。逆にGrade5(0.56Kg/Kg)の症例では歩行自立に十分な筋力水準であった。Grade4-から5-(0.29から0.39Kg/Kg)では、歩行自立の可否を左右する重要な筋力水準を含んでいた。よって、MMTのみでは歩行自立に必要な筋力水準を検出する測定精度や、その筋予備力を判別するには不十分であることが示唆された。 以上のことから、主観的要素の関与するGrade3+以上、特に重要な筋力水準を含む可能性のあるGrade4-から5-では、客観的な筋力測定機器による評価を加える必要性があるものと考えられた。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2002 (0), 600-600, 2003
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680540552960
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- NII論文ID
- 130004577277
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可