経皮的末梢神経電気刺激が知覚電流閾値に与える影響について

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抄録

【はじめに】物理療法で利用される経皮的末梢神経電気刺激(TENS)の目的は鎮痛効果であり,鎮痛発生機序には神経性及び生化学的機序が考えられている。  我々はTENSによる神経性機序について感覚神経活動電位,短潜時体性感覚誘発電位を用いて検討した結果,活動電位の伝導抑制やシナプス伝達抑制が認められたことを報告してきた。今回,TENSが知覚電流閾値に与える影響について強さ時間曲線を用い検討したので報告する。 【対象と方法】本実験の主旨に同意し,神経学的に何ら症状を呈さない健常成人男性10名(年齢21.5±5.5歳)を対象とした。  TENSには低周波治療器イトーテンズ120Z(伊藤超短波株式会社製)を使用した。刺激条件は双極性パルス波で高頻度刺激(周波数100Hz,刺激幅80μsec)を選択し,電極は左側手掌部と同側示指指腹にラバー電極を貼付した。なお,刺激強度は知覚閾値の100から160%の範囲で漸増し20分間刺激を与えた。  強さ時間曲線の測定にはレコーディングクロナキシーメーターCX-3(OG技研株式会社製)を用いた。電極は左側示指指腹にマイエル型導子を置き,同側前腕遠位部にラバー電極を貼付し,TENS施行前後に測定した。なお,統計処理にはWilcoxon の符号付順位和検定を用い有意水準は5%未満とした。 【結果】TENS施行前の強さ時間曲線における各持続時間の刺激電流平均値は300msecで0.4±0.2mA,100msecで0.5±0.2mA,10msecで0.5±0.1mA,1msecで0.9±0.2mAでTENS施行後には300msecで0.5±0.2mA,100msecで0.6±0.2mA,10msecで0.7±0.2mA,1msecで1.2±0.3mAと有意に高値を示した(p<0.05)。また0.1msecでは2.8±0.8mAから4.4±1.7mA,0.01msecでも18.1±3.0mAから25.0±4.5mAと有意に高値を示した(p<0.01)。 【考察】一般に電気刺激は最も電気抵抗の少ない部位を通って伝えられるが生体においても同様である。皮膚感覚受容器には表皮と真皮の基底膜を貫かないマイスナー,パチニ小体などの感覚受容器は,基底膜を貫く神経終末よりも高い電気抵抗を有している。すなわち,知覚電流閾値では神経終末のみの興奮を惹起する可能性が考えられる。本研究の結果として,TENS施行前に比べ施行後では刺激電流値が有意に高値を示したことより電気的受容体(神経終末)の閾値上昇すなわち順応が惹起された可能性が推察された。今後,神経終末が受容する温度刺激や痛み刺激が知覚電流閾値に与える影響について検討する必要がある。

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  • CRID
    1390282680540573184
  • NII論文ID
    130004577313
  • DOI
    10.14900/cjpt.2002.0.633.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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