Timed Up and Go Testにおける歩行距離と速度指示が検査結果に及ぼす影響
Description
【目的】高齢者の動作能力および動的バランスの簡便な評価尺度の一つとしてTimed Up and Go Test(TUG)が提唱されている。TUGは高さ約46cmの椅子上での椅子座位を開始姿勢として、椅子から立ち上がって直進歩行し、180°方向転換して再び歩行した後に着座するまでの所要時間を計測するものである。原法では、「歩行距離3m、至適の動作速度」という測定条件に設定されているが、TUGを用いた研究によっては、「歩行距離5m」や「最大の動作速度」と測定条件を修正している場合もある。そこで本研究では、TUGの歩行距離と動作速度を異なる測定条件に設定した際の検査結果の再現性と他の指標との関係について比較検討し、測定意義とその応用範囲を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は、デイケアサービスを利用している高齢者で、監視レベル以上で歩行可能な者17名(男性9名、女性8名)とした。平均年齢75.12±8.52歳、身長150.35±9.61cm、体重53.75±7.01kg、老研式活動指標0から11点、改訂版長谷川式知能検査(HDS-R)は4から29点であった。測定項目は、TUG、バランス尺度としてFunctional Balance Scale(FBS)、ADL評価尺度であるBarthel Index(BI)とした。TUGは「3m至適速度」、「5m至適速度」、「3m最大速度」、「5m最大速度」と、4つの測定条件下でそれぞれ2回ずつ実施し、再現性を級内相関係数(ICC(1,2))を算出した。また、各測定条件下におけるTUGとFBS、BIとの間のスピアマン順位相関係数を算出した。【結果と考察】全対象者について、各条件下のTUGの値は、3m至適速度16.77±7.21s、5m至適速度23.23±10.61s、3m最大速度13.39±6.09s、5m最大速度19.34±9.43s、FBSは34から55点、BIは65から100点であった。各条件下でのTUGのICC(1,2)は、3m至適速度0.98、5m至適速度0.96、3m最大速度0.99、5m最大速度0.99といずれも高値であった。各TUGとBIの間には有意な相関関係は認められなかったが(r=-0.33から-0.43)、各TUGとFBSとの間には有意な負の相関関係が認められた(r=-0.66から-0.79)。また、HDS-Rが21点以上の群(7名)と20点以下の群(10名)とを比較すると、いずれのTUGもHDS-Rが21点以上の群でFBSと有意な負の相関を示していた。その係数は、最大より至適、5mより3mで高い値であった。【結論】Podsialoらは健常高齢者を対象に、原法の測定方法の再現性と妥当性を報告している。本研究結果から、TUGを用いて評価を行う場合には、測定条件を変化させることで再現性に大きな影響は及ぼすことはなかった。先行研究から5m最速歩行では、FBS、10m最速歩行速度の双方と相関がみられることから検査項目を減らしたい場合など目的に応じた設定が可能であると言える。しかし、痴呆等によって最大努力のパフォーマンスが得られにくい場合には、3m至適速度による測定が優れている可能性が示唆された。
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2002 (0), 629-629, 2003
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Keywords
Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680540576768
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- NII Article ID
- 130004577308
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed