立位から片脚立位施行時の筋活動(第1報)
書誌事項
- タイトル別名
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- ―テンポの違いによる筋活動開始への影響―
抄録
【緒言】<BR> 立位姿勢はヒトの主生活姿勢であり,他の霊長類からヒトを区別分類する上での基本的特徴とされている.ヒトの立位姿勢における姿勢調節機構に関し,随意的上肢運動時として立位から上肢挙上時の姿勢筋の先行活動については多数報告されている.結果,運動の施行条件によって筋活動開始の反応時間が異なるとされている.しかし,立位から片脚立位施行時など,随意的下肢運動時における施行条件の違いによる筋活動開始の違いを検討した報告は少ない.<BR> 今回我々は,立位から片脚立位施行時の特にテンポの違いが筋活動開始の反応時間に及ぼす影響を筋電図学的に検討し,立位からの姿勢変化に伴う筋活動を明らかにすることを目的として報告する.<BR>【対象と方法】<BR> 対象は,健常成人男性20名(平均年齢30.1±3.9歳)とした.施行動作は立位から音刺激に対して片脚立位を行い,音刺激中,片脚立位保持を持続することとした.筋電測定はノラクソン社製筋電計マイオシステム1400を用いた.導出筋は腹直筋,外腹斜筋,脊柱起立筋,大殿筋,中殿筋,大腿二頭筋,大腿直筋,前脛骨筋,腓腹筋とした.音刺激は同システム内のメトロノーム機能を用い筋電計と同期した.施行条件の違いとしてのテンポの違いは,メトロノームの設定を1)6bpm,音刺激時間5秒間,2)10bpm,音刺激時間3秒間,3)30bpm,音刺激時間1秒間の3条件とした.筋活動開始の時間定義は音刺激開始後の基線の2SDを越えた時点とした.この筋活動開始を3条件のテンポの違いで比較検討した.統計処理はKruskal Wallis H test後,post hoc testとしてMann-Whitney U-test with Bonferroni correctionを行い有意水準は5%未満とした.<BR>【結果と考察】<BR> 3条件での比較では,3)で最も筋活動開始が早く,遠位筋と比較し近位筋で早期に筋活動開始が見られた.局所筋に対する姿勢筋の先行活動は外乱が自らの行為によって誘発される場合といわれ,今回の様な単純反応時間課題においては,0.3~0.5秒の一定時間の準備期で反応時間は最小となるとされている.今回準備期が短い,つまり3)において早期の筋活動開始が認められたことより,テンポの早い片脚立位施行時で近位筋の筋活動開始の反応時間が短縮することが示された.今回は,他動的な外乱に対する検討ではなく,あくまでも随意的運動時の姿勢調節機構の検討である.そのため,今後,高齢者ならびに転倒経験者を対象とした姿勢筋活動開始の特性を比較していくことで,随意的下肢運動における姿勢調節機構低下の解明への一指標になりうると考えられる.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2004 (0), A0730-A0730, 2005
公益社団法人 日本理学療法士協会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680540618496
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- NII論文ID
- 130005012203
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可