臨床実習に求められる能力に関する検討

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  • ―臨床実習を半年後にひかえて―

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抄録

【はじめに】臨床実習は臨床実習指導者(以下、SV)の指導のもと、理学療法過程の一連の流れを学習する貴重な経験の場である。その指導の中で、養成校教員は学内教育を実践している立場から、学生の学習を促す立場にある。従って、臨床実習前の学生の臨床的な技術・知識・思考過程などの能力を把握することは、臨床実習をより円滑に進める上で有意義である。今回、臨床実習前の学生の臨床能力を分析したので報告する。<BR>【対象と方法】約半年後に臨床実習をひかえた本校の3年生(昼間部・夜間部)を対象とした。昼間部が39名、平均年齢24.1±1.0歳、夜間部が38名、平均年齢26.9±5.7歳である。分析対象は、該当学生が3年生夏期に行った学外実習の総合成績(以下、実習成績)、実習後のゼミナール(以下、ゼミ)の成績、及び3年生までに履修した関連科目の成績とした。検討項目は実習成績(資質、対象者・SVとのかかわり、理学療法への興味)とゼミ成績(評価、治療、動作観察の実技)の関係、ゼミ成績とその評価項目に関連すると考えられた科目成績(評価学、運動学、運動療法学)との関係を対象とし、Spearmanの順位相関を用い検討を行った。また、ゼミ成績においては、それぞれの項目間の関係をFriedmanの分散分析により検討した。<BR>【結果】実習成績とゼミ成績の各項目との関係、及び、実習成績の下位項目である対象者・SVとのかかわり、理学療法への興味の項目とゼミ成績の各項目においては相関関係を認めなかった。しかし、実習成績の下位項目である資質とゼミの評価(rs=0.44)、資質と動作観察(rs=0.44)、資質と治療(rs=0.32)においては相関関係を認めた。またゼミ成績の各項目と関連科目成績の関係においては、評価と理学療法評価学(rs=0.39)、動作観察と運動学(rs=0.37)、治療と運動療法学(rs=0.39)においてそれぞれ相関関係を認めた。ゼミ成績の各項目間の比較では、動作観察の成績が他の評価と治療の成績に比べて統計学的に有意な低値を示した(p<0.05)。<BR>【考察】今回の結果は、学生の資質形成レベルが、技術・知識・思考過程などの学習に影響を及ぼしていることを示唆したものと考える。理学療法士として備えるべき資質の形成は、理学療法士として必要な諸能力の学習を促進するために重要な要素と考えられる。また関連科目の学習到達レベルも学生の技術・知識・思考過程に関係する傾向を示したことから、臨床実習において学生が経験をとおして学ぶ過程やSVからの指導の理解状況に差が生じる可能性があると考えられる。また、動作観察のように、正常機能の理解だけでなく臨床的な異常な機能を知り、その現象を診た経験により差のでるような思考を要する過程において、学生は統合的な思考過程が構築できず、その結果、行動に結びつけることが困難であると考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2004 (0), G0564-G0564, 2005

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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