筋音図を用いた筋機能評価の試み

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抄録

【目的】<BR> 筋収縮時に皮膚表面上に生じる微細振動を記録したものを筋音図(Mechanomyogram:MMMG)といい、MMGは筋線維が収縮する際に筋線維が側方に拡大変形することにより生じる圧波が原因であると考えられている。また、MMGは、筋張力制御における運動単位(MU)の活動様式の解析に、有用な指標となることが示唆されている。MMGの時間周波数解析にはMatching Pursuit(MP)法を用いた。MP法では信号の周波数解析の過程にWigner分布を用いることで、短時間フーリエ変換(STFT)法より詳細な時間周波数分布が得られる。<BR> 本研究では上腕二頭筋を対象として等尺性随意ランプ収縮時のMMGの時間周波数分布をMP法より解析しMUの活動様式の変化を明らかにすることを目的とする。<BR>【方法】<BR> 被験者は座位で、体幹をベルトで固定し、上腕を体側に固定した。肘関節90度屈曲で前腕を回外位に保ち、等尺性ランプ収縮を行った。<BR> MMGは、上腕二頭筋の筋腹上に両面テープを用いて添付した加速度センサを用いて導出した。MMGはアンプを用いて増幅し、1から250Hzの帯域フィルタを通過した後に計測用PCに記録した。なお、各信号のサンプリング周波数は1000Hzである。実験に際しては、事前に詳細な説明を行い、被験者として実験に参加する同意を得た。<BR>はじめに被験者の最大随意収縮力(Maximum Voluntary Contraction:MVC)の測定を行った。次に、モニタ上に表示した目標値を視認しながら等尺性ランプ収縮を行った。筋張力は4秒間10%MVCを維持した後、90%MVCまで8秒間で直線的に増加させた。<BR>【結果と考察】<BR> MMGは、60%MVC前後に振幅が急峻に増加した。時間周波数解析は、比較検討を行うため、STFT法とMP法を適用した。その結果を比較すると、周波数成分の出現に同様の傾向を確認できるが、SFFT法では周波数成分がぼやけており、厳密に周波数成分を特定することが難しかった。一方、MP法では周波数成分の現れる時間や周波数帯域をよりはっきりと特定することが出来た。10から30%MVCの範囲においてMMGの振幅はほぼ同程度の値を維持している。また、MP法による結果、周波数成分は12Hzおよび20Hz付近に集中していた。これらの特徴より、この区間はST-MUが主たる活動を行っていたと考えられる。また30から60%MVCの範囲では、はじめに30Hz前後の周波数成分が現れ、時間の経過と共に更なる高周波成分も確認できた。そして、MMGの振幅も急峻に増加しており、これらのことから、FT-MUの動員が始まったのではないかと推察される。<BR>【まとめ】<BR> 本研究では、上腕二頭筋の等尺性ランプ収縮時のMMGを測定し、MP法を用いて時間周波数解析を行った。その結果は、ST-MUとFT-MUの活動様式を推定でき可能性を示した。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2004 (0), A0724-A0724, 2005

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680540642048
  • NII論文ID
    130005012197
  • DOI
    10.14900/cjpt.2004.0.a0724.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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