悪性腫瘍による股関節離断症例の理学療法

  • 太田 麻子
    帝京大学医学部附属病院リハビリテーション部
  • 亘理 克治
    帝京大学医学部附属病院リハビリテーション部
  • 一重 吉史
    帝京大学医学部附属病院リハビリテーション部
  • 丸山 陽介
    帝京大学医学部附属病院リハビリテーション部
  • 近藤 恵子
    帝京大学医学部附属病院リハビリテーション部
  • 松浦 美麗
    帝京大学医学部附属病院リハビリテーション部
  • 長屋 崇
    帝京大学医学部附属病院リハビリテーション部
  • 滝野 勝昭
    帝京大学医学部附属病院リハビリテーション部

書誌事項

タイトル別名
  • 早期義足歩行退院を目標に

説明

【はじめに】悪性線維性組織球腫による股関節離断術施行症例の,理学療法について報告する。<BR>【症例紹介】49歳,男性[診断名]悪性線維性組織球種(以下MFH)[既往歴]拡張型心筋症(NYHAの分類4),高血圧症[社会背景]MFH発症により運送業退職,生活保護,元ベース奏者,妻と小学3年生の息子と3人暮らし<BR>【経過】平成12年12月,右大腿部腫瘤に気付き,平成13年1月,精査目的に当院入院,MFHと診断され病名告知。以降,放射線療法および化学療法開始。化学療法による心臓への副作用,広範囲切除術における入院期間を考慮し,3月28日,右股関節離断術施行。4月2日より理学療法(以下PT)開始。体力低下と易疲労性が著明なため,全身調整運動を目的とした平行棒内歩行を中心に実施。また,義足歩行を考慮した立位・歩容についても指導した。5月には腰痛予防の運動を追加し,創治癒により断端荷重練習開始。6月にフルソケット,固定膝を選択した仮義足が完成し,義足歩行練習開始。また,理学療法士が腰痛予防用座位補高具を作製。運動時は,心筋シンチグラムにて35%,βブロッカー内服による心肺機能の変動が出現しにくいことを考慮し,Borgスケールを使用した。7月中旬より主治医許可のもと,両松葉杖での応用歩行練習開始。その後,8月25日に両松葉杖使用の義足歩行にて自宅退院した。PT中は,ラポール形成に努め,リハビリテーションについて理解と意欲が得られるよう援助した。また,リハスタッフ内でのカンファレンスにて,早期退院に向けての方針を決定した。 <BR>【考察】切断原因がMFHであることと,家庭での父親としての役割を考慮し,早期の義足歩行による家庭復帰を目標とした。従って,義足はフルソケット,固定膝を選択した。自宅退院後,転移が発見され外科的治療および放射線・化学療法のために入退院を繰り返し,平成15年5月に腹腔内転移性腫瘍破裂により死亡した。入退院を繰り返しても,義足歩行はその都度可能であり,歩行能力が原因で入院が長期化することはなかった。これは,はじめの義足歩行獲得が確実であったためと考える。PTは,通常の切断PTに準ずるのではなく,放射線・化学療法の副作用を考慮したPTを実施した。また,腰痛予防目的の腰痛体操や座位補高具は有用であると思えた。心疾患は,リスク管理により義足歩行獲得に支障なかった。しかし,運動療法は実際の運動負荷試験結果に基づいて実施した方が,最大限の運動能力を引き出すと思われた。一方,症例の心理状態を治療中のコミュニケーションから理解し,リハスタッフ連携の中で共通情報としたことが,方針決定に役立った。本症例を通して,理学療法士は身体機能のみならず,心理面にも関与すべきであると強く再認識させられた。<BR> 症例の家庭復帰期間は十分であったといい難いが,家族と義足歩行で外出したことについて明るく話していたことや生存期間等を考慮すると,早期自宅退院の意義があったと考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2003 (0), C0170-C0170, 2004

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680540708992
  • NII論文ID
    130004578089
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.c0170.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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