温泉が慢性心不全患者のナチュラルキラー活性機能に与える影響

DOI
  • 工藤 義弘
    九州大学病院 別府先進医療センター 九州保健福祉大学 大学院 保健科学専攻 博士課程
  • 尾山 純一
    九州大学病院 別府先進医療センター
  • 矢守 とも子
    九州大学病院 別府先進医療センター
  • 中園 貴志
    九州大学病院 別府先進医療センター
  • 西山 保弘
    九州大学病院 別府先進医療センター

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抄録

【研究目的】温泉療法は最近の研究で慢性心不全にも有効であることがわかってきた。その作用機序の一つとして、温泉の生体免疫機能の改善効果が明らかにされている。しかしながら、その詳細なメカニズムを科学的に解析した報告はほとんどないのが現状である。そこで、温泉がナチュラルキラー活性機能の改善に有効であるかどうか検討することは、慢性疾患患者に対する温泉の有用性を証明すると共に、その生物学的および医学的な機序を解明するためにも重要であると考えた。NK細胞は、抗腫瘍効果(NK活性)を有し、初期の免疫応答、すなわち自然免疫応答に関わる細胞群である。また、最近はNK活性を有する以外に免疫応答の調節にも密接に関わっていることが明らかになってきた。 以上のような観点から、リハビリテーションをも兼ねた温泉が初期免疫応答さらには免疫応答に重要な役割を演じるナチュラルキラー(NK)活性に与える影響について検討した。<BR>【対象と方法】 対象:NYHAIII以下の慢性心不全患者(虚血性心臓病5名,心筋症1名)の6名(男性4名,女性2名)を対象とした。平均年齢は79.6± 6.4歳(平均±標準偏差)で、研究の目的と内容に関しては十分にインフォームドコンセントを行った。温泉の方法:温泉環境として、単純泉を選択した。室内温度を28°Cとし、温度は40度に設定した。時間は10分間で、回数は週5回以上毎日とした。方法としては、半身浴または胸骨の深さまで温泉することとした。温泉における安全性の確保と身体機能の把握のため、初回時の温泉前後60分間、また毎回の温泉前後にバイタルサインのチェツクを行った。適宜、医師による診察、さらに温泉最終回にも前後60分間バイタルサインのチェツクを行った。温泉の安全性に関しては慎重に臨んだ。採血:温泉前および2週後に採血を行い、NK活性の量を測定した。NK活性の測定:NK活性はクロムリリーズ法を用いて測定した。<BR>【結果】 温泉療法におけるNK活性の動態:NK活性は温泉療法開始前に比較して2週間後では低下傾向を示した(開始前: 33.5±9.02 %、2週間後: 30±8.56 %)。しかし統計学的な有意差は認めなられなかった(P =0.159)。 <BR>【考察】 本研究では、温泉とNK活性能に関して検討を試みた。NK細胞は抗腫瘍活性を有する。本研究では温泉2週間後にはわずかであるが、NK活性が低下傾向を示した。温泉は一時的なNK活性能の低下示すが、温泉の継続はNK活性の潜在的な能力を引き出すためには非常に重要な手段になるのではないかと考えられる。酸性温泉や高温温泉では短期期間であってもNK細胞活性が上昇する可能性があると言われている。いずれにしても温泉や運動習慣の継続は、免疫能力を獲得するための効果的な手段になると考えられる。今後さまざまな側面から温泉の医学的効果を検証していきたいと考えている。<BR><BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), A0596-A0596, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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