反応時間測定方法の比較

DOI
  • 深川 優子
    医療法人財団池友会 香椎丘リハビリテーション病院 リハビリテーション科
  • 前田 哲男
    鹿児島大学医学部保健学科理学療法学専攻
  • 木山 良二
    鹿児島大学医学部保健学科理学療法学専攻

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抄録

【はじめに】反応時間(RT)は刺激から動筋の筋活動開始までの筋電図反応時間(PMT)と筋活動開始から実際の運動開始までの電気力学的遅延(EMD)に分けられる。今回、臨床で簡易的に行うことのできる定規落下試験で得られたRTと研究で用いられる筋電計から得られたRTについて比較検討した。<BR>【対象】特別な疾患のない健常人(男性15名、女性15名、平均年齢21.5±1.2歳)であった。<BR>【方法】○試行A:定規落下試験を行い、落下距離から自由落下の公式よりRTを算出した。同時に検査者の手指と被験者の手掌に筋電計を同期させた圧感知スイッチを貼付し、落下開始時刻・反応時刻からPMT・EMDを算出した。○試行B:筋電計に同期させた圧感知スイッチに示指を接触させた状態からキータッチ動作を行わせた。運動開始の合図には筋電計に同期させた光刺激を用い、ランダムに5回刺激を行った。筋活動開始の判断は波形が20μVを越えた時刻とした。筋電図上で得られた3つの時刻からRT・PMT・EMDを算出した。<BR> 対象とした筋は両試行ともに浅指屈筋とし、5回の測定値を平均したものを個人値とした。筋電計はNORAXON社製筋電図計測装置、分析装置はMyo System1200、圧感知スイッチは5Nの圧力に反応する酒井医療株式会社ノルスイッチを用いた。分析はそれぞれの試行間差を検定するために対応のあるt-検定を用い、統計学的有意水準を5%とした。また試行Aと試行BのRTについては2試行間の相関係数を算出した。 <BR>【結果】RT:試行Aは666.7±68.6msec、試行Bは224.8±38.7msecであり統計学的に有意差が認められた。PMT:試行Aは182.2±61.4msec、試行Bは180.4±27.6msecであり統計学的に有意差は認められなかった。EMD:試行Aは91.7±27.7msec、試行Bは45.9±22.6msecであり統計学的に有意差が認められた。2試行間(RT)の相関:r=0.37(p<0.05)とやや有意な相関が認められた。 <BR>【考察】試行Aと試行BはPMTやEMDといった異なる要素についての測定であって相互の関連性は低いことが認められた。試行Bは動作自体が力を必要としない運動課題であったこと、圧感知スイッチに手指を接触した状態から運動を行わせたこと、圧感知スイッチが5Nという微小な圧を感知したことにより、試行Aに比べEMDが短縮したものと考えられる。条件のまったく異なる試行ではPMTとEMDの各要素が大きく変動し、RTに影響を及ぼしていることが示唆された。RTの測定には、力を必要としない運動課題、関節運動の生じない運動課題かつ同一条件下での測定ではじめてPMTの個体間比較が可能であることが示唆された。今後は、他の影響因子との関連性や妥当性・信頼性についての検討が課題となると思われる。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), A0602-A0602, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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