側対歩(ナンバ歩き)の運動力学的分析
書誌事項
- タイトル別名
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- ―第3報・直後の立位平衡機能に及ぼす影響―
説明
【はじめに】我々は第38回・第39回本学会においてナンバ歩き中の下肢の運動力学特性を報告したが,そこで生じた下肢運動の変化は上位体節の姿勢制御方略の変化に対する代償運動であると仮説した.今回は「ナンバ歩き」を習得課題として理学療法に応用することの是非を検討するために健常者の普通歩行課題とナンバ歩き課題後の立位重心動揺を指標にその運動課題特性を考察したので報告する.<BR>【方法】健常成人12名(年齢29.3±6.1歳,身長168.2±7.9cm)を対象に身体重心移動軌跡(アニマ社製重心動揺計GS-30を使用)を測定した.課題動作はトレッドミル上歩行(バイオデックス社製トレッドミルRTM 500を使用)とした.プロトコルは(1)普通歩行15分間,(2)ナンバ歩き15分間,(3)普通歩行15分間とし,歩行速度は3km/minとした.ナンバ歩き課題は「腕を身体に接し振らずに歩くこと」と教示し,十分な練習ののち行った.課題間には10分間の休息(臥位)をとり,課題開始前と各課題直後に60秒間の開眼立位重心動揺を測定した.分析項目は総軌跡長,単位軌跡長,単位面軌跡長,重心動揺実効値面積とした.<BR>【結果】結果は平均値で表す.総軌跡長(cm)は運動課題前64.83±9.0,普通歩行(1)後70.37±7.96,ナンバ歩き後64.65±9.19,普通歩行(2)後67.39±9.12で,普通歩行後に延長するがナンバ歩き後には短縮し,普通歩行(2)後にも短縮効果が持続した.単位軌跡長(cm/sec)も運動課題前1.08±0.15で,普通歩行(1)後1.17±0.13(1.35),ナンバ歩き後1.07±1.077,普通歩行(2)後1.12±0.15で,軌跡長と同様ナンバ歩き後には短縮した.単位面軌跡長(1/cm)は運動課題前11.28±1.47,普通歩行(1)後11.79±1.85,ナンバ歩き後11.59±1.90,普通歩行(2)後11.64±1.64で,同じくナンバ歩き後に減少し,普通歩行(2)後にも減少効果が持続した.実効値面積(cm2)は,運動課題前2.59±0.59,普通歩行(1)後3.04±0.65,ナンバ歩き後1.96±1.45,普通歩行(2)後2.93±1.19でナンバ歩き後に狭小化し普通歩行(2)後にも効果が持続した.<BR>【考察】運動後の姿勢制御は運動の視覚・体性・前庭感覚の残存により重心移動軌跡は延長し投影面積は拡大する.同一環境下,同一速度においても運動課題の相違がその後の静止立位中の重心動揺に若干の相違をきたすことがわかった.ナンバ歩き後には普通歩行後よりも重心移動軌跡は短縮し移動面積は減少し,さらにはその効果はその後に行う普通歩行課題後にも保持された.静止立位重心動揺検査が課題動作の特性を表現するかは疑問が残る.測定項目を変えて更なる検討を重ねることを今後の課題とする.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2004 (0), A0641-A0641, 2005
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680540780288
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- NII論文ID
- 130005012179
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可