等速度の蹴り出しとスクワットにおける筋活動の比較
Description
【はじめに】我々はこれまでに等速度運動評価訓練装置(BIODEX MEDICAL社製BIODEX MULTI-JOINT SYSTEM 3PRO;以下、BIODEX)を用いた下肢の蹴り出し(以下、push)動作と引き込み(以下、pull)動作を分析し、膝靱帯損傷患者に対する運動療法への適応について検討してきた。今回、等速度のpushとスクワット(以下、SQ)における筋活動様式を明らかにするために筋活動電位を計測し、若干の知見を得たので報告する。【対象と方法】下肢に既往のない健常男性8名(平均年齢24.4±3.9歳、身長171.7±5.8cm、体重71.9±19.5kg)を対象とした。 pushは等速度運動での下肢複合動作が可能なBIODEX CKCアタッチメントを用い、背もたれ35°後傾での長坐位にて膝関節の運動範囲は0°から90°に設定し、角速度180°/secにてpushを10回繰り返した。SQはAMTI社製フォースプレート(BIOMECHANICS PLATFORM SET)上で行い、体幹前傾位で膝関節の運動範囲を0°から90°として10回施行し、1動作を身体重心の下降相と上昇相に位相分けした。pushとSQの2相の遂行時間はメトロノームを用いて同一に規定した。 筋活動電位の測定はNORAXON社製表面筋電計(MyoSystem 1200)を用い、導出筋は大殿筋、大腿直筋、外側広筋、内側広筋、内外各ハムストリングスおよび腓腹筋(外側頭)の7筋とした。各筋の最大等尺性随意収縮時の筋活動(MVC)を計測し、ピークトルクを発生したpush時と床反力の安定したSQの筋活動量を正規化し、平均%MVCとして算定し、paired t testを用いて有意水準を5%未満として比較検討した。【結果】push時における各筋の平均%MVCは、大殿筋76.2、大腿直筋48.9、内側広筋112.0、外側広筋98.3、内側ハムストリングス54.9、外側ハムストリングス68.1、腓腹筋外側頭82.8であった。SQにおける下降相、上昇相での各筋の平均%MVCは、それぞれ大殿筋28.9と24.2、大腿直筋22.8と26.2、内側広筋50.3と60.7、外側広筋46.2と40.6、内側ハムストリングス13.4と11.7、外側ハムストリングス19.0と15.9、腓腹筋20.7と23.5であった。pushとSQ各相の平均%MVCの比較では、すべての筋においてpushの筋活動量が有意に大きかった。【考察】pushは最大随意収縮時の50から110%以上、さらにSQの1.8から4.7倍の筋活動量を示した。これよりpushは自重に対する前傾位のSQと比較して、下肢の抗重力筋に対して運動負荷の高いトレーニングであることが示唆された。さらにpushの大腿四頭筋の筋活動量がSQの1.8から2.6倍であったのに対し、ハムストリングスの筋活動量は4.3から4.7倍となり、膝関節への前方剪断力が増大する可能性は低いと考えられた。以上の結果から、長坐位でのpushはACL再建膝に対する下肢筋力強化のトレーニングとして有用であることが示唆された。
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2002 (0), 141-141, 2003
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Keywords
Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680540868992
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- NII Article ID
- 130004576767
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed