SLRによる仙骨部の体圧・ずれ力変動について

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抄録

【研究目的】<BR>現在,医療・福祉分野では褥瘡予防が注目されており,理学療法士もプロジェクトへの参加が求められている.我々は良好なポジショニングによって体圧やずれ力の上昇を最小限にすることを研究している.今回,背臥位での股関節屈曲角度と体圧・ずれ力変動の関係を検討したので報告する.<BR>【対象及び方法】<BR>健常男性30名中,SLR 60度でハムストリングスに抵抗感があった11名及び中等度の骨突出を仙骨部に認められた3名を除いた16名を対象とした.ハムストリングスの抵抗感の評価は同一被検者にて行った.平均年齢29.3歳,平均BMI22.8kg/m2であった.測定方法は被検者をマット付プラットホーム(SAKAI社:SPR519)上に背臥位とし,非利き脚側の下肢をSLR(passive)に保持した時の仙骨部体圧とずれ力を測定した.仙骨部(S1・S4)の皮膚に体圧ずれ力同時測定器(モルテン社:プレディア)を直接貼り付け,股関節屈曲0~60度間で測定を行った.0度から10度間隔で測定を行い,挙上速度は各角度間5秒にて施行した.股関節屈曲側における下肢重量の支持を踵部にて行い,測定肢位を一分間保持し値が安定したものを実測値とした.被検者は褥瘡発生のリスク対象者と同条件となるようにパジャマ(綿性)とウレタン枕(20×31×8cm)を使用した.<BR>【結果】<BR>股関節0度における体圧の平均値は,S1が36.5mmHg,S4は85.6mmHgであった.S1の体圧は股関節屈曲0度~30度では緩やかに増加したが統計学上の差は認められなかった.30度~60度では屈曲角度の上昇に伴い増加傾向を示し,60度で最高値となり0度の約3.2倍となった.S4は0度と他の角度肢位で増加傾向(1.1~1.4倍)を示したが,S1とは異なり角度上昇による著しい体圧増加を認めなかった.S4は全ての肢位においてS1よりも高い値であるが,S1の体圧増加率は屈曲角度に伴い上昇し,2群間の体圧差は角度が増すごとに狭小した(0度間:49mmHg,60度間:16mmHg).ずれ力は両群ともに角度の上昇の伴い増加した(S1:0~3.0N,S4:0~2.7N).<BR>【考察】<BR>仙骨部による褥瘡発生の危険参考値は38mmHg以上である.S1の体圧は屈曲に伴い増加しており,褥瘡発生のリスクも屈曲角度とともに高まることが示唆される.またS4はどの角度肢位も危険参考値を大きく超えており褥瘡発生のリスクとなることが確認された.S1の体圧は屈曲角度につれ増加率が大きくなるため,S4に骨突出がある場合よりS1の骨突出者は,より褥瘡発生のリスクが高くなることが予測される.ずれ力の危険参考値は4Nであり危険参考値を越えることは無かったが,角度の上昇の伴い増加が認められたため,60度以上の屈曲は褥瘡発生のリスクとなると考える.なお病的骨突出者は今回の結果以上に体圧・ずれ力変動となるため十分な注意が必要である.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2004 (0), A1083-A1083, 2005

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680540925440
  • NII論文ID
    130005012273
  • DOI
    10.14900/cjpt.2004.0.a1083.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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