胸郭拡張差と胸椎可動域の関係

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【目的】臨床では脊椎全体の可動性評価のみならず、分節ごとの可動性評価も重要である。これまで臨床で脊椎の可動域(以下ROM)評価は角度計を使用することが一般的であった。しかしこの方法では脊椎全体の可動性しか評価することができず各分節ごとの可動性を評価することはできなかった。又、分節ごとの可動性を客観的に評価する為には特殊な機器を使用しなければならず、日々の臨床には不向きであった。我々は臨床で簡便に行える方法として胸郭拡張差(以下拡張差)に着目し、胸椎の可動性との関係を調査したので報告する。<BR>【対象】脊椎に整形外科的疾患の既往のない健常男性15名(年齢26.9±4.1、身長171.3±6.5)である。<BR>【方法】立位にて拡張差を腋窩、剣状突起、第10肋骨高位の3点で計測した。各部位3回計測し、計測した値の平均値を各部位の拡張差とした。胸椎ROM計測はindex社製SpainalMouseを使用し、安静立位(以下安静位)、立位胸椎最大屈曲位(以下屈曲位)、立位胸椎最大伸展位(以下伸展位)の3肢位で計測した。各肢位とも3回計測し、計測した値の平均値を各肢位の胸椎角度とした。安静位は頭位が耳孔と外眼角を結ぶ線が床面と平行、足幅を肩幅に開いた肢位とした。また頭位を一定に保つために前方1.5mの目標を注視させた。胸椎ROM値は安静位の椎体角度を基準として屈曲位・伸展位ともに安静位からの椎体角度変化量をROM値とした。検討項目は(1)胸椎全体の平均ROMと各高位での拡張差、(2)第1~第6胸椎の平均ROM(以下上部胸椎ROM)と各高位での拡張差、(3)第7~第12胸椎の平均ROM(以下下部胸椎ROM)と各高位での拡張差の関係である。<BR>【結果】胸椎全体のROMおよび上部胸椎ROMは屈曲、伸展ともに各高位での拡張差とは一定の関係は認められなかった。下部胸椎屈曲ROMと各高位での拡張差、下部胸椎伸展ROMと腋窩高位の拡張差には屈曲、伸展ともに一定の関係は認められなかったが下部胸椎伸展ROMと剣状突起・第10肋骨高位の拡張差には正の相関関係を認めた(P<0.05)。<BR>【考察】肋骨の運動軸は上部肋骨では前額面に下部肋骨では矢状面と平行にちかいことから下部肋骨の挙上運動の方が上部肋骨の挙上運動に比べ、より胸椎の伸展角度の影響を受けると思われる。また肋骨の弧長は第6、直長は第7が最大であり肋骨の運動軸が変化した際には胸郭下部の拡張差が大きくなるものと考えられる。このようなことより胸郭上部の拡張差と上部胸椎の可動性に一定の関係は認められなかったが、胸郭下部の拡張差と下部胸椎の伸展可動性には正の相関が認められたものと思われる。今回の結果から胸郭拡張差の測定が下部胸椎可動性評価の一助となりえることが示唆された。

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