健常人の足底における2点識別覚と測定姿勢の関係

説明

【はじめに】足底の感覚は姿勢の保持・調節の重要な因子の1つである。複合感覚に属する2点識別覚の役割は、支持面の凹凸や材質の体性感覚野への伝達である。それにより遠心性線維が環境に適応した姿勢をとるための、筋収縮強度・タイミングをフィードバックし、安定かつスムーズな動作が行われる。通常の感覚検査は背臥位で行われているが、下肢の筋緊張亢進により感覚閾値に変化があれば、理学療法アプローチにおいて考慮すべき点になるのではと考えた。今回足底の2点識別覚に焦点を絞り、健常人の下肢で姿勢によって作り出した筋の緊張時とリラックス時での比較を試みた。<BR>【対象と方法】対象は健常男女21名(男性3名、女性18名、平均24.1±2.8歳)。両前足部体重支持での立位(以下前足部荷重時)、両踵部体重支持での立位(以下踵部荷重時)、背臥位(以下臥位時)の3種類の姿勢で左右の2点識別覚閾値を測定。前足部荷重時と踵部荷重時を荷重時とした。荷重時では壁際に25cm台を設置、被検者は台に裸足で乗り、リスフラン関節までの前足部と、踵骨での体重支持を壁に向かって行った。倒れない程度に軽く壁を両手で支えるよう口頭指示した。測定器具はキャリパーを用い、足底外側部を長軸方向に測定。被検者1人につき、前足部荷重時→踵部荷重時→臥位時と臥位時→踵部荷重時→前足部荷重時の順に2回時間を変え実施。検者間格差を除くため検者は1人とした。統計学的解析にはt検定を用い、有意水準は5%未満とした。<BR>【結果】1回目の前足部荷重時は1.6±0.74、踵部荷重時1.3±0.65、臥位時1.1±0.53であった。2回目の前足部荷重時1.2±0.71、踵部荷重時1.0±0.53、臥位荷重時1.2±0.49であった。1回目と2回目の前足部荷重時の結果同士、踵部荷重時の結果同士はそれぞれ有意差があった。前足部荷重時と踵部荷重時、前足部荷重時と臥位時は1回目の計測は有意差があったが、2回目は有意差が無かった。(単位はcm)<BR>【考察】荷重時より臥位時の方が、測定の順序・時間を変えても再現性があると考えられる。2点識別覚の検査姿勢は背臥位とされているが、妥当な姿勢であった。測定回数を重ねると前足部荷重時と踵部荷重時、前足部荷重時と臥位時の2点識別覚閾値に有意差がみられず、標準偏差値は2回目が減少しており、慣れによる閾値の向上が否定できない。検査結果に改善傾向が見られたことは、例えば患者へのアプローチ前後の2点識別覚閾値に改善がみられても、必ずしもアプローチによる改善を表していることを意味しないと考えられる。荷重時では2点識別覚閾値が大きく、しかもそのバラつきが大きい傾向を示した。荷重時では立位バランスを保ちながら支持することによる注意の分散と、足部の筋を含む下肢筋群の収縮、靭帯の伸張などの発生による感覚機能への影響があったのではないかと考えた。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2004 (0), A1112-A1112, 2005

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680540943104
  • NII論文ID
    130005012302
  • DOI
    10.14900/cjpt.2004.0.a1112.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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