前鋸筋の筋活動について
説明
【目的】<BR> 上肢挙上運動で前鋸筋は肩甲骨の胸壁固定の作用があるといわれている。臨床上、この筋に対して肩甲帯の安定性を向上させる目的でさまざまな筋力強化や機能回復訓練を行っているが十分な評価が出来ていなかった。今回、筋電計を用いて前鋸筋を含めた肩周囲筋に対して、仰臥位と座位の筋力測定肢位の違いと肩挙上角による筋活動量の変化を調査した。また、他の肢位も併せて調査検討したので報告する。<BR>【方法】<BR> 対象は、肩に外傷の既往がなく疼痛を認めない健常男性20名(右肩20肩)で、平均年齢24.8±3.23歳であった。<BR> 表面筋電計(Noraxon社製MyoSystem1400)を用い筋活動の計測をした。導出筋は、前鋸筋・僧帽筋上部・大胸筋・三角筋とした。測定肢位は、仰臥位・座位・四つ這い位・斜め腕立て伏せ位とし、各肢位で肩関節挙上90°・120°の角度で測定した。それぞれの肢位と角度で最大等尺性収縮を5秒間計測し、波形の安定した1秒間の筋電積分値を算出し、比較検討した。仰臥位と座位では、筋電計を測定するのと同時に徒手筋力測定器(日本メディックス社製PowerTrack)を用い、最大抵抗力を測定した。<BR>【結果】<BR>1.前鋸筋活動については、各肢位間において座位が最も有意に高値を示した。他の肢位では、ほぼ同様の値を示した。仰臥位と座位では、座位での値が仰臥位と比べ2倍以上の活動量であった。<BR>2.座位では、前鋸筋に比べ僧帽筋上部と三角筋が高値を示した。その他の肢位では、前鋸筋が高かった。<BR>3.各肢位での挙上角については、斜め腕立て伏せ位以外の肢位で120°よりも90°が高い値を示す傾向があった。<BR>4.最大抵抗力は、座位よりも仰臥位での値が有意に高値を示した。<BR>【考察】<BR> まず、仰臥位と座位での前鋸筋活動において1と4の結果より筋電計での値と実際の抵抗値が逆の状態になった。これは、肢位により測定した筋以外の代償の関与が大きくなったのではないかと考える。つまり、仰臥位では抵抗する支持面が座位よりも広く、体幹筋の固定がより発揮できた為に前鋸筋の活動自体が低く抑えられたとのではと考える。前鋸筋の評価を行う際には、仰臥位よりも少ない抵抗力で確実な筋活動が評価できる座位が適していると考えられる。その時、僧帽筋と三角筋の状態にも留意する必要がある。<BR> 次に、肩挙上の角度が大きくなると前鋸筋活動量が低下する傾向が認めた。これは、電極の貼付した位置に関連があるのではないかと考えた。体表面からでは第1から第8肋骨の広い範囲で起始を持つこの筋の下部筋にしか電極を貼付することができない。つまり、今回の結果は下部筋の活動を反映したものではないかと示唆される。更に、筋付着への筋の走行を考えると肩甲骨の上方回旋に伴い、上部筋がより作用するのではないかと考えた。<BR> 今後、肢位や肩挙上角により前鋸筋の作用に留意し、更に動的な筋活動への関連性についても検討したい。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2004 (0), A1119-A1119, 2005
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680540946560
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- NII論文ID
- 130005012309
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可