ADL動作における体幹筋活動

DOI
  • 平山 雅教
    北海道千歳リハビリテーション学院 理学療法学科 千歳豊友会病院 リハビリテーション科
  • 伊藤 俊一
    北海道千歳リハビリテーション学院 理学療法学科
  • 隈元 庸夫
    北海道千歳リハビリテーション学院 理学療法学科
  • 徳富 みずき
    北海道千歳リハビリテーション学院 理学療法学科 北星病院 リハビリテーション科
  • 久保田 健太
    千歳豊友会病院 リハビリテーション科

抄録

【はじめに】<BR> ADLにおける大腿四頭筋での筋活動は,最大筋活動に対して歩行で10から20%,立ち上がり動作で30から50%であったと伊東らは報告している.また,従来からADL動作時の体幹筋収縮による体幹・骨盤コントロールは重要とされ,HodgesらによりADL動作における収縮の協調性や収縮速度に関する検討がなされている.しかし,依然として一般臨床での運動療法時には体幹浅層筋強化が主流であり,かつADL動作時にどの程度の体幹筋活動量が必要なのかについての詳細な報告も少ないため,筋力強化が第一選択となっている場合が多い.<BR> 本報告の目的は,ADL動作時の体幹筋活動量を明らかにし,体幹筋力評価や筋力強化時の目標設定を行うための一助を得ることである.<BR>【対象と方法】<BR> 対象者は,腰痛症既往のない健常男性10名(平均年齢26.0±3.4歳)とした.<BR> 方法は,一般的ADL動作として,1)仰臥位からの起きあがり動作(以下,起き上がり動作),2)歯磨き,3)椅子からの立ち上がり,4)歩行,5)階段昇降,各々の動作を5回ずつ行わせて体幹筋活動を計測した.<BR>導出筋は,左右腹直筋(臍より3cm外側),左右腹斜筋群(臍より15cm外側),左右脊柱起立筋(L1-2の高位で棘突起より6cm外側)とし,各筋の筋活動量をNORAXON 社製(U.S.A.)表面筋電図マイオシステム1400を用いて導出した.なお筋活動量は,Daniels の徒手筋力検査(第7版)でのNormal測定時の平均積分筋電値を100%とし,各々の動作時の筋活動量を%MVCとして算出して比較した.<BR> 解析には,Kruskal-Wallis H-testを用い,その後Mann-Whitney U-testを用いて,有意水準を5%として検討した.<BR>【結果と考察】<BR> 結果,各動作時の個々の%MVCでの再現性は極めて高かった.さらに,腹直筋,腹斜筋群,脊柱起立筋の%MVCは,1)の起き上がり動作と比較して,2)から5)の全ての動作で有意な低値を示した(p<0.05).<BR> Richardsonらによると,深部の固定筋群による分節的安定性により表在筋による体幹・四肢運動の安定した動作遂行が可能となるとされている.今回の測定結果から、ADL動作においては体幹浅層筋活動量は極めて低かったことから必ずしも強い浅層筋活動が必要でないことが示され,今後は各筋の持久的検討も必要と思われた.<BR> また,今後深層筋活動の測定が必要不可欠ではあるが,ADL動作を保証するためには体幹浅層筋強化のみならず,収縮時の協調性や収縮速度にも配慮しながらの体幹筋収縮に対する質的検討が重要となると考えられる.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2004 (0), A1037-A1037, 2005

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680540957184
  • NII論文ID
    130005012227
  • DOI
    10.14900/cjpt.2004.0.a1037.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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