身体部位による触知覚の差

Description

【目的】ヒトの動作は、視覚や触覚など多くの感覚情報をもとに制御されている。理学療法の場面では、誘導や抵抗運動など患者さんに直接触れる機会が多い。“触る”ことによって引き起こされた動作の変化を調べた報告が散見される。それらによると、皮膚からの感覚入力が姿勢調節等の変化を引き起こしたとされている。また皮膚感覚受容器の研究は古くからなされており、受容器の特異性や数、密度などの報告がみられる。皮膚から効率良く感覚入力を行うことで、姿勢・動作を変化させうる可能性が広がると考えられる。知覚検査において殿部周囲の知覚鈍麻が示唆され、それが原因で座位保持が困難であったと考えられた症例を経験した。訓練を継続する中で、殿部への刺激や肩甲帯周囲に触れることで座位姿勢に変化がみられることがあった。そこで、身体部位によって触知覚にどれだけの違いがあるかを調べることにした。<BR><BR>【方法】測定方法:触覚の測定はTouch-Test sensory evaluator(Semmes-Weinstein monofilaments)の2.83フィラメントを用い、評価方法は説明書に準拠した。接触面に対して直角になるようにフィラメントをもち、軽く曲がる程度に押しつけた。1ポイントで3回の試技を行い、1度でも知覚できれば知覚できたものとした。測定部位毎に1cm2の範囲に7×8=56ポイントを設定した。その全56ポイントをランダムにテストした。各被験者で測定部位毎に知覚できたポイント数を数えた。測定部位:全て身体の右側とし、第2指中節末節間関節以遠(以下指先)、肩峰と肘頭の中点(以下上腕)、肩峰、下部肋骨と腸骨稜の中点、腸骨稜と大転子の中点(以下殿部外側)の5ヶ所。被験者:健常人7名(男性4名 女性3名)。平均年齢23.1±4.8歳。全被験者に対し、実験の趣旨を説明し了解を得た。測定部位間のポイント数に差があるか検討した。部位間の差の検定には一元配置分散分析(ANOVA、統計ソフトSAS)を用いた。<BR><BR>【結果】分散分析の結果、部位による主効果を認めた(F(4,30)=4.94 p=.0035)ため、Scheff&eacute;の多重比較を行った。その結果、指先と上腕、指尖と殿部外側において有意差が認められた(p<0.05)。他の部位間では有意差は認められなかった。<BR><BR>【考察】感覚受容器の密度は身体各部で異なり、知覚閾値も一定ではない。しかし今回の結果では指先と上腕・殿部外側にのみ有意差があり、他の身体部位では差がなかった。指先での密度の高さと閾値の低さが原因と考えられる。指先の接触が姿勢や歩行を安定させるという報告がある。指先での触知覚は、他の身体部位からの触知覚より姿勢・動作に多くの影響を与えている可能性が示唆された。<BR><BR>【まとめ】同じ強さの触刺激を与えた場合、指先と上腕、指先と殿部外側において知覚できるポイント数に有意な差が認められた。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680540959232
  • NII Article ID
    130005012232
  • DOI
    10.14900/cjpt.2004.0.a1042.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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