正常圧水頭症の脳室拡大が歩行、平衡機能に及ぼす影響について

説明

【はじめに】<BR> 正常圧水頭症について発生原因や発生頻度に関する報告は多く見られるが、脳室の拡大状態、歩行、平衡機能に関する報告は少ない。脳室周囲にある前頭葉は水頭症により圧迫をうけやすい。また、前頭葉と歩行機能は関係するという報告もある。そこで、脳室の拡大は、歩行レベル、平衡機能や歩行速度、歩幅にも影響するのではないかと考え重心動揺や以下の測定を実施したので若干の考察を加え報告する。<BR>【対象と方法】<BR> 対象は特発性水頭症で、独歩かT字杖にて20m監視または自立にて歩行可能な症例8名、平均年齢は77.0±5.6歳(64~84歳)であった。脳室の拡大状態はCTもしくはMRIの画像を用い、水頭症の判定基準より、前頭角の最大幅と頭蓋骨内板から内板までの径の比を用いた。また、拡大状態が40%未満をA群、40から50%未満をB群、50%以上をC群に分類した。重心動揺の測定は20秒間の開眼静止立位を、重心動揺計(アニマ社製、GS-3300)を使用し足部を肩幅に開いた姿勢で実施した。20m歩行の時間、歩数、歩幅を測定し、歩行レベルも評価した。<BR>【結果】<BR> A群とB群は各々4名で、C群に該当する症例はなかった。A群の総軌跡長の値は25~42cm、外周面積は0.8~3.8cm2、矩形面積は2.6~9.9 cm2の範囲であった。歩行レベルは独歩自立2名、遠位監視2名であった。また20mの歩行時間は20~26秒、歩数は31~58歩、歩幅は27~30cmの範囲であった。同様にB群の総軌跡長は40~55cm、外周面積は2.7~6.5 cm2、矩形面積は8.8~18 cm2の範囲であり、すべてA群より大きい傾向を示した。歩行レベルは近位監視1名、T字杖歩行監視3名でA群より歩行能力は低かった。20mの歩行時間は21~180秒、歩数は68~240歩、歩幅は20~29cmとばらつきが大きかった。<BR>【考察】<BR> 水頭症の症例は歩行時、小刻み歩行、すくみ足、突進現象などが見られる。進行すればADLの低下、臥床状態となると言われている。今回、A群に比べB群の方が歩行レベルの低下が認められ、ばらつきはあるものの20mの歩行時間と歩数も低い値を示した。また重心動揺に関しても、A群よりB群が総軌跡長と面積の両方が増大していた。よって脳質の拡大の程度は、歩行レベルや重心動揺に影響を及ぼすことが示唆された。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2003 (0), A0854-A0854, 2004

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680541026048
  • NII論文ID
    130004577776
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.a0854.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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