高齢慢性有疾患者に対する体幹柔軟性向上訓練がADLに与える影響

DOI
  • 柏木 学
    医療法人社団静和会 平和リハビリテーション病院 リハビリテーション科
  • 伊藤 梢
    医療法人社団静和会 平和リハビリテーション病院 リハビリテーション科
  • 加藤 麻衣子
    医療法人社団静和会 平和リハビリテーション病院 リハビリテーション科
  • 秋本 貴子
    医療法人社団静和会 平和リハビリテーション病院 リハビリテーション科
  • 岡野 徳雄
    医療法人社団静和会 平和リハビリテーション病院 リハビリテーション科
  • 松岡 陽二
    医療法人社団静和会 平和リハビリテーション病院 リハビリテーション科
  • 伊藤 俊一
    北海道千歳リハビリテーション学院 理学療法学科

抄録

【はじめに】高齢者や脳卒中片麻痺患者などの高齢慢性有疾患者において,ADLに与える因子は数多く報告されている.本邦の研究では,年齢,Brunnstrom stage,下肢筋力,四肢ROM,深部感覚,歩行能力などがADL評価と相関するとされている.中でも,ROMでは四肢に比べ体幹の可動域制限が多いとされているにも関わらず,四肢ROMとADLの相関に対しての論述に比べ,体幹柔軟性との関連について述べた詳細な報告はない.<BR> 本報告の目的は,高齢慢性有疾患者に対する体幹の柔軟性向上がADLに与える影響を検討することで,効果的運動療法実施のための一助を得ることである.<BR>【対象と方法】対象は高齢慢性有疾患者40名(平均年齢78.8±10.8歳)とした.内訳は,中枢性疾患30名,神経学的脱落所見のない疾患10名であった.発症からの期間は,15.6±2.7(12ヶ月~19ヶ月)であった.<BR> 方法は,全例にPost Isometric Relaxation(以下,PIR)exによる体幹筋のリラクゼーション訓練を施行し,訓練前後のFinger Floor Distance(以下,FFD),Functional Reach Test(以下,FRT),SLR,最大10M歩行時間,FIMの歩行項目(以下,歩行FIM),靴の着脱時間,およびADL変化を検討した.更に第1回目の測定日より3日以上を経過した状態で再評価を行い,効果の持続性と評価の再現性について検討した.<BR> PIR-exは2週間継続して行い,この間の即時的効果や意欲の変化に関してVisual Analog Scale(以下,VAS)を用いて検討した.解析には級内相関係数,Spearmanの順位相関係数,Kruskal-wallis H-test後,Mann-Whitney U-test with Bonferroni correctionにて検定を行った.また,この際の有意水準は5%とした.<BR>【結果と考察】PIR-ex施行時間は,全例1回1分以内で,平均施行回数は11.2±2.6回であった.ex後,FFD,FRT共に有意な改善が認められ,3日以降の再測定でもこの改善は維持されていた.また,この際SLRでは有意な変化を示さなかったことから,この改善は体幹柔軟性そのものの改善結果と考えられた.<BR> また,FIMによるADL評価では有意な改善は示さなかったが,靴の装着時間に有意な短縮が認められた.さらにex施行前に比べ,患者自身の活動性や意欲の向上が認められた.<BR> 以上の結果は,たとえ高齢の慢性有疾患者であっても,体幹の柔軟性を向上させることが機能の一部に影響することが示され,運動療法を行う際には四肢のROMのみならず体幹の柔軟性改善へ配慮し,具体的ADLの項目に変化を与えることが重要なきっかけとなると考えられた.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2004 (0), E0849-E0849, 2005

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680541032576
  • NII論文ID
    130005013145
  • DOI
    10.14900/cjpt.2004.0.e0849.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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