ハイヒールを履いての持続歩行が腰椎前弯を増強させる要因の検討

書誌事項

タイトル別名
  • 腹筋と大殿筋の筋力に着目して

説明

[目的]腰椎前彎が増強することが、腰痛出現の原因となることは諸家により報告されている。ところが現代の日常生活のなかには腰椎前彎を増強させる要因は数多く存在し、ハイヒールを履いての持続歩行を長時間にわたって行うこともその一つである。そこで今回、腰椎前彎の増強を抑制する働きを持つ腹筋と大殿筋に着目し、ハイヒールを履いて持続歩行を行うことが、これらの筋の筋力に与える影響について検討を行った。[対象]現在腰痛がなく、かつ日常的にハイヒールを履くことがほとんどない健常女性14名を対象とした。平均年齢は23.1歳(20-35歳)、平均身長は161.2cm(156-171cm)、平均体重は55.1kg(45-70kg)であった。[方法]測定は、A)安静背臥位を30分間とらせた後(以下、安静背臥位後)、B)ヒールの高さがほとんどないスニーカーを履いての歩行を30分間持続させた後(以下、スニーカー歩行後)、C)ヒールの高さが7cmのハイヒールを履いての歩行を30分間持続させた後(以下、ハイヒール歩行後)に行った。ただし、それぞれの測定の間には30分間の休息をとらせた。1)腹筋の筋力評価:米国ロレダン社製リドバックシステムを用いて、角速度60度/sec下における体幹前屈運動を後屈位10度から前屈位60度の間で行わせ、腹筋の筋力のピークトルク値を測定した。そして、各被検者の安静背臥位後の筋力を1と仮定したときのスニーカー歩行後およびハイヒール歩行後の筋力を算出して、指標とした。2)両大殿筋の筋力評価:徒手筋力検査を用いて行った。[結果]1)腹筋の筋力:スニーカー歩行後の平均は0.95±0.01であった。また、ハイヒール歩行後の平均は0.80±0.07であった。スニーカー歩行後とハイヒール歩行後の間において有意差がみられた(p<0.01)。2)両大殿筋の筋力:安静背臥位後およびスニーカー歩行後は全対象者ともに筋力5であった。だがハイヒール歩行後は筋力4に低下した被検者が6名、筋力3に低下した被検者が7名であった。残り1名は筋力5のままであった。[考察]腹筋や大殿筋の筋力が低下することにより腰椎前彎が増強するため、椎間関節や椎間板組織、諸靭帯にストレスがかかる。そして、このようなストレスの蓄積が、腰痛の発症へと結び付いていくと考えられる。さて今回、たとえ30分間であったにしろ、ハイヒールを履いて持続歩行を行うことにより、腹筋や大殿筋の筋力が歩行前やスニーカー歩行後に比べて低下することが明らかになった。これは、ハイヒールを履いて長時間にわたる持続歩行を行うことが、自ら腰痛症を発症させる状況を作っていることに等しいことを示唆するものである。だが職場や職業によっては、どうしてもハイヒールを履かなければならない場面が存在する。そこで職務上のTPOを考慮した靴を選択するように指導や教育を行うことが重要と思われた。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2002 (0), 199-199, 2003

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680541165568
  • NII論文ID
    130004576830
  • DOI
    10.14900/cjpt.2002.0.199.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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