統計学の有意水準について

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【はじめに】 本邦における医学統計学への関心はあまり高くない。筆者は理学療法研究における統計学の現状あるいは問題点などについて、第37、38回日本理学療法学術大会で述べたが、今回は有意水準についての現状を考察したので報告する。有意水準とは統計学的検定のための目安となる確率の大きさのことであるが、慣習的に世界水準で5%がよく用いられる。 また、最近の傾向ではパソコンの普及によって簡単にP値(有意確率)が計算される為、検定の結果を示す場合、P=αのように等号を使って示すことが多くなってきている。そこで実際にはどのように有意水準・有意確率が記載されているのかを、理学療法研究における医学統計学の現状として述べる。<BR>【方法】 第38回日本理学療法学術大会抄録集より、統計的検定がされている演題を対象に次のようなことについて調査した。有意水準・有意確率についての記載の方法、記載の場所、大きさなど。その他について。<BR>【結果と考察】857題のうち統計処理がされていたものは525題であったが、有意水準についての記載が全くないものは、そのうちの124題(23.6%)もあった。有意水準についての記載のあるもの401題のうち、[方法]の最後のところで検定法といっしょに有意水準についての記載をしているものは180件と半数近くを占め、有意水準の記載方法としては慣習化しつつある。また有意水準の大きさは5%以内としたものは166件で圧倒的に多かった。1%以内としたものは14件と少なかった。[結果]のところで、有意水準について記載のあったもので、P<α(不等号)の形で記したものは275件で、ほとんどのものは5%と1%を記載したが、それ以外を記したものは9件あり、P<0.02、P<0.03、P<0.04などがあった。有意水準の決め方は自由であるが、それなりの理由が必要である。P=α(等号)の形で実際の有意確率の値を記したのものは最近の傾向とはいうものの22件と少なかったが、そのうち等号、 不等号の両方共を使って記載しているものは11件であった。両方が記載されているもので、有意差がないことを示す場合に、P=αのように等号を使って有意確率(P値)を表示しているものが多かった。その他として、相関関係の強さを表す時に、有意水準の違いと相関の大きさとを混同していることがある。例えばP<0.001であると、R(相関係数)=1のような、つよい相関があると勘違いしてしまうことがある。相関係数を示さないで、有意水準だけを示して相関の強さをあらわしていることがある。相関の強さを表すものはあくまで相関係数であって、有意水準ではない。最後に、“より具体的な結論の記述例"として、「有意水準5%のもとで、2群の母平均には差がある(P=0.007)。」と群馬大学の青木繁伸氏は述べている。

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  • CRID
    1390282680541191680
  • NII Article ID
    130004577855
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.a1040.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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