質的バランス評価と定量的バランス評価の関係
説明
【はじめに】<BR> 我々は、第41回日本理学療法学術大会において、高齢者用に改良した質的バランス評価であるBalance Error Scoring System(以下;高齢者用BESS)と虚弱高齢者における転倒歴の関係について報告した。その結果、身体反応を観察する高齢者用BESSは、再現性があり、転倒歴と関係する評価方法であった。しかし、転倒に関連する定量的なバランス評価との検討が課題として残された。そこで、本研究は高齢者用BESSと定量的バランス評価の関係を調査し、その妥当性を検討することを目的とした。<BR>【対象】<BR> 当院通所リハビリテーション利用者で家屋内移動手段が歩行である30名(男性4名、女性26名)、平均年齢80.4±4.8歳であった。なお、全ての対象者には本研究の目的および内容を説明し、同意を得た上で実施した。<BR>【方法】<BR> 高齢者用BESSは、フローリングと車椅子用クッションの2種類の床面形態上で、両足幅を10cm開かせた両足立ちと継ぎ足立ちの2種類の立位条件で実施した。両上肢は、腸骨稜上に置き、20秒間閉眼立位保持したときに生じた身体反応をエラー数として数えた。測定は、エラーを数える測定者と転倒を防止する介助者の2名で行った。各テスト前に練習を行い、そのあと測定を実施した。定量的バランス評価の静的バランスとして開眼片足立位保持時間(OLS)、機能的バランス評価としてTimed up and go test(TUG)、Functional reach test(FRT)を測定した。転倒歴は、過去1年以内に転倒を2度以上経験している者を転倒有群、それ未満の者を転倒無群とした。統計学的分析には、Mann-Whitney検定、t検定、Spearmanの順位相関係数を用い、有意水準5%未満をもって有意とした。 <BR>【結果と考察】<BR> 転倒有群(13名)は、転倒無群(17名)に比べて高齢者用BESS、TUGが有意に高い値を、OLS、FRTは有意に低い値を示した(p<0.05)。全対象者において、高齢者用BESSはOLS(r=0.40、p=0.03)、TUG(r=0.74、p<0.01)およびFRT(r=0.46、p=0.01)とそれぞれ有意な相関があった。TUGは動的バランス能力の指標とされていることから、高齢者用BESSは動的バランス能力を主に反映する評価であると考えられる。以上のことから、高齢者用BESSは、転倒リスクを反映し、定量的バランス評価と関係する質的バランス評価であることが示された。<BR>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2006 (0), A0516-A0516, 2007
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680541252608
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- NII論文ID
- 130005013366
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可