2004アテネパラリンピック競技大会水泳チーム帯同報告

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【はじめに】2004年9月7日から28日までの12日間,ギリシャのアテネでパラリンピック競技大会(以下,アテネパラリンピック)が開催された。今回,本大会の日本選手団水泳チームのコーチ兼トレーナーとして参加する機会を得たので報告する。<BR>【概要】アテネパラリンピックは,世界136か国から6000名を超える選手,役員が参加し,19競技が行われた。日本選手団は,選手163名,役員108名の計271名が17競技に参加した。水泳チームは,選手24名,役員10名の計34名であった。結果は,日本選手団のメダル総数が52個,そのうち水泳選手団は23個のメダルを獲得(金8個,銀6個,銅9個)した。<BR>【障害者水泳とは】基本的な規則は一般の競泳と変わるところがない。しかし,障害により国際水泳連盟の水泳規則が遵守できない選手には,その規則を緩和あるいは一部変更している。また,競技の公平性を保つためには同じ障害のレベルの選手同志が競う必要があることから,各障害の水泳の競技力で評価するクラス分けが行なわれる。<BR>【活動内容】<BR>1.アテネパラリンピック大会前<BR> 2001年から本大会までの間に,国際大会強化指定選手を対象にした国内合宿が合計12回実施され,我々はそれらすべてに参加した。その中での主な役割は,1)コンディショニングの調整,2)運動機能障害から見た効率的な泳法のアドバイス,3)使用薬物・サプリメントのチェック及び確認であった。<BR>2.アテネパラリンピック大会期間中<BR> 大会期間中の主な役割は,1)コンディショニングの管理・調整,2)ドーピング検査への対応,3)入水退水介助,4)栄養指導であった。1)については同一日にレースのある選手,連日レースが続く選手,蓄積疲労でパフォーマンスが落ちた選手を中心に徒手的手技を用いてケアを行なった。部位別では,水泳の運動特性上,肩関節周囲筋が最も多く,ついで腰部,大腿部の順であった。2)については本大会からオリンピック同様のドーピング検査が実施されたことから,使用薬物やサプリメントの服用状況の把握に努めた。また,選手には毎日選手日誌の記入を義務付け,身体状態の変化や摂取栄養を把握し,必要に応じて指導するようにした。<BR>【まとめ】パラリンピックの競技志向は2000年シドニーパラリンピック以降いっそう強まっているように思われる。そのため選手は「勝つこと」を要求され,従来のリハビリテーションの一環としての障害者スポーツと一線を画し,アスリートとしての能力が問われるようになっている。しかし,これは障害のある選手にとって過用や誤用による二次的な障害が発生することにつながりかねない。今後は障害特性,競技特性を理解し,二次的な障害の予防,ドーピングやスポーツ栄養学などの知識も含めた幅広く対応できる能力が必要になると思われる。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680541275136
  • NII Article ID
    130005013102
  • DOI
    10.14900/cjpt.2004.0.e0806.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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