サーフィン傷害の実態調査

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説明

【目的】近年、サーフィンは、レクリエーションおよび競技スポーツとして注目を集めている。サーフィンの歴史は古く、西暦400年頃にさかのぼることができる。ハワイやタヒチに住んでいた古代ポリネシアの人々が発祥と考えられている。日本では1965年に日本サーフィン連盟が発足し翌年の7月には第1回の全日本選主権が行なわれている (NSA 2005)。現在、日本サーフィン連盟の会員は約19,000人であるが会員数は毎年増加しており100万人以上のスポーツ人口と推測されている。しかし、サーフィンに関する生理的研究や身体的損傷の報告は少ない(Mendez-Villanueva A 2005)。本研究の目的は、日本におけるサーフィン・プレーヤ(以下、サーファー)の基礎情報の収集と理学療法支援を検討することである。【対象】神奈川県の湘南地域で主にプレーするサーファー62名(男性62名、31.3±7.3歳)である。【方法】自己記入式による質問紙調査である。質問紙はSurf’s Medical Association の資料を参考に作成した。内容は、年齢や経験年数などの基礎情報の他、サーフボードの種類、事故の有無、けがの種類、痛みの有無、準備体操の有無、準備体操の種類などである。【結果】対象者の94%が何らかのけがの経験があった。けがの種類では切り傷が全体の54%を占めていた。痛みの部位では腰部が58%、肩が23%であった。また、73%の人がけが予防として筋力練習や柔軟体操に関心を持っていたが、筋疲労を感じながらクールダウンをしない人が68%であった。【考察】サーフィンが他のスポーツと異なる点は断続的なスポーツであることがあげられる。サーフボードに腹臥位になり上肢で水をかいて推進するパドリングは運動中の全時間の約40-50%であるが、心拍数が平均75-85%(max)と高い運動負荷がかかる上に肩の使いすぎ(Overuse)が生じやすい。また、波に乗っている時間は4-5%程度であり、それ以外の約50%はサーフボード上で静止することになる。すなわち海面で静止していることにより多量の紫外線を曝露することになる(Mendez-Villanueva A 2005)。また、運動中の事故としては、岩やボードとの接触による裂傷や脊髄損傷、紫外線による熱傷、動物による咬傷などが報告されている(Sunshine S.2003)。わが国の調査ではUchidaら(1989)がサーファーズ・イヤー(外耳道の狭搾)の発症状況を調査している。また、ボードトレーニングは脳賦活効果が指摘されており(池川2001)、運動療法としても注目されている。【結論】多くのサーファーがけがや痛みを抱えているが、適切なコンディショニング支援が行なわれていない実態が把握できた。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), C0303-C0303, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

被引用文献 (1)*注記

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