脳卒中両側片麻痺の体幹機能障害に対する理学療法

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  • 持続協調的アプローチを用いて安定姿勢、動作獲得に至った一症例

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【はじめに】本症例は両側片麻痺を呈し,両下肢の随意性は保たれているにもかかわらず,体幹機能障害により坐位から歩行において安定した動作が困難であった。今回脳卒中体幹機能障害に対する理学療法において,下肢から体幹に対しての持続協調的アプローチを行い安定姿勢,動作獲得に至った一症例を経験し、若干の知見を得たので報告する。<BR>【症例紹介】75歳,男性。平成2年に脳梗塞で右片麻痺となるが、独歩にてADL自立であった。平成15年5月8日,右放線冠の脳梗塞により左片麻痺となり近院入院。同年6月12日に当院転院し、翌日より理学療法を開始した。<BR>【入院時評価】失語を含む高次脳機能障害は認めず,Brunnstrom Stageは右上下肢5,左上肢2,左下肢4から5。感覚は正常でMMT両下肢4から5,体幹2レベル。体幹機能評価では脳卒中機能評価法(SIAS)垂直性1,腹筋0,Trunk Control Test(TCT)12/100であった。坐位保持時骨盤後傾位にて後方へ容易に転倒,起居動作・立位保持要介助,歩行不可であった。起居動作時の体幹筋活動は弱く、断続的であった。立位では両下肢ともに振り出しが困難。<BR>【理学療法及び経過】本症例では,両下肢の随意性が保たれていたことから,体幹筋活動増加により歩行能力の向上につながると考えた。よって長期目標を歩行獲得とし,主に坐位保持,坐位立ち直り反応の促通,起居動作練習から理学療法を進めた。開始より3ヶ月後,SIAS垂直性2、腹筋1、TCT48/100となり、起居動作から四点杖歩行まで近位監視可能となった。しかし,坐位での骨盤前傾位保持は困難,立位での動的安定性は乏しく,歩行は実用的ではなかった。このような姿勢及び動作の不安定性は,体幹筋の収縮が努力的かつ断続的であると推論し,体幹に対し、下肢の運動に伴った無意識下での持続的かつ協調的な筋活動を求めるアプローチを行った。このアプローチでは,アライメント自己修正を意識させた足底非接地端坐位での両下肢の抵抗運動,体幹を他動的に保持した立位でのステップ反応の練習を行い,また片脚立位練習では要介助での保持とさらに前後左右へ動揺を加えた。上記練習より1ヵ月後,坐位骨盤前傾位保持可能、立位での体幹回旋を含むリーチ動作を獲得,四点杖歩行の安定性が向上し,独歩が短距離可能となった。<BR>【考察】本症例の場合,坐位での体幹筋の収縮は比較的強いが努力的かつ断続的であり,無意識下での持続的かつ協調的な収縮が困難であったと考える。立位にてその動的な保持に必要な姿勢応答には,体幹筋活動を十分に必要とする。今回行った体幹に対する持続協調的アプローチにより,姿勢応答時に必要な無意識下での協調的な体幹筋活動を獲得し,歩行能力の向上に至ったと考えられた。以上のことから体幹機能にはその筋活動の強さに加え,姿勢保持に必要な持続性,四肢の運動に伴った協調性を兼ね備えた機能が必要であり,臨床においてはその機能に対する適切なアプローチが重要であると考えられた。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680541409280
  • NII Article ID
    130004577904
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.b0449.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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