腱板断裂症例における肩屈曲運動時の棘下筋筋活動について
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説明
【目的】腱板断裂症例の理学療法において,肩関節の自動屈曲角度が不十分な場合に,肩甲骨の滑動性と肩関節自動屈曲角度の向上を目的として腹臥位で患側上肢を下垂した肢位からの自動屈曲運動を取り入れている.今回,腱板断裂症例の立位および腹臥位での肩関節屈曲運動時における棘下筋および前鋸筋の筋活動を解析し,その筋活動特性について若干の知見を得たので報告する.<BR>【対象と方法】対象はMRIにて中断裂以上の損傷が認められた腱板断裂症例で,肩関節120度以上自動屈曲可能であった2例(男性1例,女性1例,平均年齢66.0歳)と,自動屈曲120度以下であった2例(女性2例,平均年齢65.5歳)の合計4例とした.対照群は,健常成人6名(男性2名,女性4名,平均年齢28.7±5.8歳)とした.運動課題は,立位での肩関節屈曲80度,および腹臥位での屈曲120度等尺性運動で,それぞれ5秒間を3回ずつ行った.導出筋は棘下筋および前鋸筋とし,腱板断裂群は患側を,健常群は右側を測定した.表面筋電図の導出には,前置増幅器(DPA-10P,ダイヤメディカルシステムズ)および増幅器(DPA-2008,ダイヤメディカルシステムズ)を使用し,サンプリング周波数は1kHzでパーソナルコンピューターに取り込んだ.運動開始2秒後から1秒間の積分値を算出し,立位屈曲80度の値を基準として正規化した(%IEMG).<BR>【結果】腹臥位での健常群の%IEMGは,棘下筋では99.9±17.4%であり,前鋸筋で107.1±27.5%であった.自動屈曲120度以上可能な症例においては,棘下筋および前鋸筋の%IEMGは1例で221.8%および90.3%であり,他の1例では166.5%と130.6%であった.自動屈曲120度以下の症例においては,1例が124.7%および33.2%であり,他の1例が83.9%と63.9%であった.<BR>【考察】自動屈曲120度以上可能であった症例の前鋸筋の筋活動は健常群と同程度であったが,棘下筋の筋活動は健常群よりも明らかに大きかった.このことは,棘上筋が損傷している状態において,棘下筋が肩関節屈曲運動に強く関与していることを示唆していると考えられる.また,自動屈曲120度以下の症例においては棘下筋の筋活動は健常者と同程度であったが,前鋸筋の活動は明らかに少なく,このことが肩関節屈曲運動を困難にしている要因の一つではないかと考えられた.したがって,腱板断裂症例の理学療法においては棘下筋および前鋸筋の筋活動を高めるようなプログラムの施行が必要であると考える.しかし,本研究では各筋の最大随意収縮時の筋活動を計測していないことや,関節運動が大きな肩関節において表面電極を用いて筋活動を導出しているなど,いくつかの問題点が考えられる.今後は症例を増やすと共に,より精度の高い手法での検討を行う必要がある.<BR><BR><BR><BR>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2005 (0), C0275-C0275, 2006
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680541411456
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- NII論文ID
- 110004994636
- 130004579204
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- NII書誌ID
- AN10146032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可