MRIを用いた肩関節運動に伴う肩鎖関節の関節運動学的解析
説明
【はじめに】肩鎖関節は鎖骨肩峰端と肩甲骨肩峰関節面との間の平面関節に分類されるが、関節面の形状は鎖骨がわずかな凸面を、肩甲骨がわずかな凹面をなす。肩鎖関節の運動は、肩峰に対する鎖骨肩峰端関節面の滑り運動と、鎖骨に対する肩甲骨の回旋の2種類があるといわれている。関節面の形状から関節運動学的な凹凸の法則を考慮すると、前者は鎖骨が凸の法則、後者は肩甲骨が凹の法則で動くと考えられる。そこで、MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)を用いて、肩関節運動時の肩鎖関節の動きを解析したので報告する。【対象と方法】被験者は実験の承諾を得た健常女性13名。平均年齢は20.9(19-23)歳、身長と体重の平均値±標準偏差は、152.4±2.47cm、45.3±3.5kg。測定肢位は、背臥位にて(1)上肢を体側につけた基本肢位、(2)肘関節90゜屈曲位での肩関節90゜屈曲位、(3)肘関節90゜屈曲位での肩甲帯前方突出位、(4)肩関節水平屈曲位の4課題。(2)(3)(4)の各肢位は他動的に保持し、(3)(4)は体幹の代償が出ない範囲の最大角度とした。MRI(GE社製SIGNA1.5T)によるT2強調横断像を用い、以下の角度と距離を解析した。角度は、肩甲骨と床面とのなす肩甲骨角、鎖骨と床面とのなす鎖骨角、肩甲骨と鎖骨とのなす肩甲骨-鎖骨間角。距離は、肩峰外側端から床面への垂線と胸椎棘突起からその垂線への水平線との交点を定め、胸椎棘突起と交点との肩峰-棘突起間水平距離、および肩峰外側端と交点との肩峰-棘突起間垂直距離。同様に、鎖骨外側端からその垂線への水平線との交点を定め、鎖骨外側端と交点との肩峰-鎖骨間水平距離、および肩峰外側端と交点との肩峰-鎖骨間垂直距離とした。結果はSPSSver.11にて処理し、危険率5%未満を有意とした。【結果と考察】方法で述べた解析項目の順にその平均値(角度[゜]と距離[mm])を示す。課題(1)48.5、14.4、63、158.6、75.6、20.2、4 (2)45.1、32、77.2、133.7、38.5、13.4、6.3 (3)59.9、12.6、72.5、127.5、82.8、10.9、11.4 (4)66.2、15.7、81.9、108.1、77.1、2.5、11.2。各課題間で多重比較検定した結果、肩鎖関節の動きに着目すると、肩峰-鎖骨間水平距離は課題(3)から(4)で有意に減少し、肩峰-鎖骨間垂直距離は課題(2)から(3)で有意に増加した。また、課題(2)を基準にして課題(3)と(4)それぞれへの変位量を算出し、2群間で有意差があった項目は、肩甲骨角:(3)14.8 (4)21.1、肩甲骨-鎖骨間角:(3)-4.6 (4)4.7、肩峰-棘突起間水平距離:(3)-6.2 (4)-25.6、肩峰-鎖骨間水平距離:(3)-2.5 (4)-10.8であった。これらから、肩甲帯前方突出時には肩鎖関節の垂直方向の滑り、すなわち肩峰外側端は腹側に、鎖骨外側端は背側に滑る動きが主で、はじめにで述べた2種類の動きの前者に相当する。一方、肩関節水平屈曲時には肩鎖関節の水平方向の滑り、すなわち肩甲骨角の増加に伴って肩峰外側端が腹内側に、鎖骨外側端は背外側に移動する動きが主となり、2種類の動きの後者に相当する。いずれも肩甲骨の鎖骨に対する凹の法則に従う動きと考えられる。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2002 (0), 109-109, 2003
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680541477760
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- NII論文ID
- 130004576731
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可