重度糖尿病性神経障害患者の手指機能

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抄録

【目的】糖尿病性神経障害を合併した糖尿病性切断患者の義足装着における問題点の1つにアイスロスライナーやPTB義足のソフトインサートの装着困難がある。また,カフベルトやシレジアバンドを美錠(バックル)でとめるのが難しい時もあり,手指機能の低下が疑われる。これらの患者は下肢に様々な症候を呈する。また,手指の関節可動域制限や筋萎縮もみられる。しかし,糖尿病患者の筋萎縮の有無ではなく筋力や手指巧緻性の評価を行った検討は少ない。そこで今回我々は,重度の神経障害を合併した糖尿病患者における手指機能について調査を行った。<BR>【対象と方法】対象は2型糖尿病患者2例であった。症例1:男性,51歳,両足部に神経障害性潰瘍の既往あり。症例2:男性,66歳,左大腿切断。2例とも重度の糖尿病性神経障害が下肢にみられた。また,足部の筋萎縮,関節可動域制限,足部変形,足底胼胝など足部潰瘍の危険因子が存在した。手指機能に影響を及ぼす可能性のある中枢神経系疾患や整形外科疾患は存在しなかった。これらの症例に対し,Semmes-Weinstein Monofilamentによる手指知覚検査,筋力測定(握力,ピンチ力),筋萎縮の観察,関節可動域測定,Prayer sign,簡易上肢機能検査を行った。<BR>【結果】1.手指の知覚:症例2において若干の知覚鈍麻としびれが認められた。2.筋力,筋萎縮:症例1では握力,右36.7kg,左35kg,側腹つまみ,右4.8kg,左5kg,指腹つまみ,右2.4kg,左1.6kgであった。症例2では握力,右27.3kg,左22.2kg,側腹つまみ,右3.6kg,左3.7kg,指腹つまみ,右1.5kg,左1.3kgであり,2例とも標準値と比べて,特にピンチ力が低下していた。背側骨間筋の萎縮は2例ともみられた。3.関節可動域,Prayer sign:2例とも2~5指の中手指節関節伸展が20°~40°と制限がみられた。また,症例1において近位指節間関節伸展-5°と制限がみられた。手関節及びその他の手指関節に可動域制限はなかった。Prayer signは2例とも陽性であった。4.手指巧緻性:簡易上肢機能検査は症例1:利き手98点,非利き手99点,症例2:95点,98点と正常域内であった。<BR>【考察】今回の検討では手指の若干の知覚鈍麻,筋力低下,関節可動域制限が認められた。これらは箸の使用,硬い蓋を開けるなどの一部の動作を障害する可能性がある。義足装着に関しては,手指機能を把握して状況にあわせた装着方法を選択する必要があると思われる。今回,2症例のみのパイロットスタディであったが,下肢に重度の神経障害を持つ糖尿病患者においては手指機能も低下している可能性が示された。今後は症例数を増やし,マッチングした対照群との比較を行って,手指機能の低下が糖尿病あるいは糖尿病性神経障害に伴う固有の変化であるか確認する必要がある。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2004 (0), D1230-D1230, 2005

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680541602560
  • NII論文ID
    130005012942
  • DOI
    10.14900/cjpt.2004.0.d1230.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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