当院パーキンソン病患者のうつ症状の要因について

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抄録

【目的】<BR> パーキンソン病(以下PD)に伴ううつ症状は、リハビリテーション(以下リハ)を進めていく上で阻害因子になる。今回当院リハ対象PD患者のうつ症状の要因の中で、身体機能低下による反応性要因、社会的要因に着目し検討したので若干の考察を加え報告する。<BR>【対象と方法】<BR> 平成16年1月の時点で当院入院中のPD患者14名(男性2名、女性12名、平均年齢77.5±8.3歳:中央値76.0歳)を対象とし、うつ症状の要因について重回帰分析を用いて検討するため次のように分類した。従属変数をうつ症状評価結果(Hamilton Rating Scaleを使用:以下HRS)とした。説明変数は身体機能低下による反応性要因として罹病期間、日内変動の有無、日常生活活動(以下ADL)評価にFunctional Independent Measure(以下FIM)を使用し、移乗・移動・排泄管理などの下位13項目を運動関連項目、コミュニケーション・社会的認知の下位5項目を認知関連項目として別に処理し、社会的要因として年齢、配偶者の有無、当院入院期間とした。<BR>【結果】<BR> HRS平均得点14.2±9.5点でうつ症状があると思われる13点以上は7名であった。平均罹病期間7.8±5.3年、日内変動を有するもの6名、FIM運動関連項目平均39.1±22.3点、FIM認知関連項目平均23.9±8.5点、配偶者を有するもの8名、当院平均入院期間341.4±256.5日であった。従属変数HRSにおいて有効変数はFIM運動関連項目と年齢が有効であり、偏回帰係数はFIM運動関連項目が負の関与(-0.564、p=0.02)、年齢においても負の関与(-0.534、p=0.03)であった。<BR>【考察】<BR> 結果より、当院のPD患者の50%にうつ症状が認められ、ADLの運動能力、年齢が要因として考えられた。ADLの運動能力とうつ症状は負の関与が認められた。これはPD特有の機能障害によりADLの運動能力が制限され、活動性の低下が生じたことがうつ症状の反応性要因になったと考えられる。また年齢とうつ症状においても負の関与が認められた。今回の対象者では年齢が低い程うつ症状を引き起こし易いという傾向が認められた。PDの早期発症より身体機能の低下、ADLの制限を目の当たりにし、今後の生活への見通しの困難性や悩み・不安等からくる社会的要因としてうつ症状が生じたのではないかと考える。以上から進行するPDの機能障害に対してリハアプローチが直接的に改善・予防させることが困難であることが多い。よってADLの運動能力を確保し活動性を向上していくと同時に、患者自身がPDと向き合い現実を受容できる心理的サポートをリハアプローチとして行うことがうつ症状の改善・予防に重要であると考える。今回の研究は対象者が少数で入院患者のみと限定されていたため、今後は対象者数を増やしてさらに検討をしていきたい。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2004 (0), B0864-B0864, 2005

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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