ギャッチアップ時における股関節基準位置の検討

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抄録

【はじめに】<BR>ベッドでのギャッチアップの角度は30°以下にすると摩擦、ズレを予防でき好ましいとされている。しかしながら呼吸不全、心疾患を呈している患者や経管栄養がある場合、我々理学療法士が床上リハビリテーションを実施する場合など、長時間のギャッチアップが褥瘡の原因と理解していても、取り除くことが困難な場合が医療現場には存在する。そこで今回ズレ力を緩和するためにギャッチアップする際のベッドの屈曲基準部位における股関節のポジショニング部位を大転子と上前腸骨棘で検討し若干の知見を得たので報告する。<BR>【対象および方法】<BR>整形疾患の既往歴がない健常な男性8名を対象とした。平均年齢32.0±14.5歳、平均BMI20.8±2.0kg/m2であった。測定方法は被験者をギャッジアップ機能付きベッド(フランスベッド社製:FB730AN32TD)に背臥位とし、専用の標準型マットレス(ポリエステル)にマットレスカバー(綿)、ベッドパッド(綿)をセッティングし、枕を使用した状態で、ギャッジアップを行った。ギャッチアップ角度は40°、50°、60°、70°の4群とした。その状態でベッドのギャッジアップの屈曲基準位置を、大転子に一致させる場合と上前腸骨棘にする場合と2通りで行い、仙骨部(S4)と脊柱部(Th5)のズレ力と、体がずれる移動距離をリアルタイムで測定した。測定機器はモルテン社製:プレディアを使用しセンサー部を直接、貼り付け、S4、Th5のズレ力を測定した。移動距離の測定は踵骨部にボールペンを置き、マーキングして行った。統計処理はWilcoxon符号付順位和検定を用いて有意水準を5%未満とした。<BR>【結果】S4のズレ力では60°で大転子群が12.3±5.8 N、上前腸骨棘群が9.9±4.7Nであり、70°で大転子群が9.7±3.6N上前腸骨棘群が7.9±2.8Nで有意差を認めた(p<0.05)。Th5のズレ力では50°で大転子群が3.5±1.6 N、上前腸骨棘群が2.9±1.5Nであり、60°で大転子群が4.6±1.7N上前腸骨棘群が3.8±1.7Nで有意差を認めた(p<0.05)。体の移動距離においては70°の角度において大転子群が11.8±2.9 cm、上前腸骨棘群が10.7±2.7cmと有意に減少した(p<0.05)。<BR>【考察】今回の結果では、大転子より上前腸骨棘をベッドの屈曲基準位置とした方がズレ力、移動距離ともに減少した。このことから、両群の相違が臼蓋大腿関節の動きを伴うか伴わないかであり、骨盤大腿リズムの関与や、上前腸骨棘に位置させると、ギャッチアップを行った際に、骨盤がベッドの支持面に対して、水平位に位置する。そのため、頭頂までの高さが大転子群に比較して低くなるため、位置エネルギーが減少すると考えられる。結果として、仕事の量を減らし、それらがズレ力、移動距離の減少につながったと示唆される。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), C0188-C0188, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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