大腿骨頭壊死症に対する大腿骨表面置換術後の理学療法の経験
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説明
【目的】当院では圧潰を生じた広範囲の大腿骨頭壊死症に対して、人工骨頭置換術や人工股関節置換術よりも骨温存に有利で低侵襲である大腿骨頭表面置換術を施行している。今回大腿骨頭表面置換術を施行した4例5関節の術後の理学療法について、同年代でTHAを施行された症例と比較し報告する。<BR>【対象と方法】対象は当院にて大腿骨頭表面置換術を施行された大腿骨頭壊死症stageIII、Type C-2の4例5関節(男性2例3関節、女性2例2関節)、平均年齢29.4歳、全例ステロイド性の壊死症であった。術前JOA scoreは平均65.4点(疼痛22.0、ROM16.2、歩行12.0、ADL15.2)であった。手術は内側大腿回旋動脈を損傷することなく、股関節に進入できる手術的脱臼方法により行い、大転子を一度切離し、ポリ乳酸性スクリューを用い再接合した。術後理学療法は、THAのスケジュールと同じで、5日目より歩行開始(荷重制限なし)、7日目両松葉杖歩行、14日目片松葉杖歩行、21日目T字杖歩行、その後可能であれば独歩へと進めた。対照群として20代・30代でTHAを施行された6例7関節(男性1例1関節、女性5例6関節)、平均年齢28.0歳、JOA score39.0点(疼痛10.0、ROM11.1、歩行9.3、ADL8.6)と、術後歩行、両松葉杖歩行、片松葉杖歩行、T字杖歩行開始と、手術から退院までの日数を比較検討した。<BR>【結果】歩行開始は平均6.6日、両松葉杖開始は平均7.0日、片松葉杖は4関節で平均17.5日、T字杖開始は4関節で平均25.2日、退院は術後平均26.8日であった。退院時の歩行は独歩2関節、T字杖2関節、両松葉杖1関節であった。THA群では歩行開始は平均6.0日、両松葉杖開始は平均7.1日、片松葉杖は6関節で平均16.2日、T字杖開始は4関節で平均22.5日、退院は術後平均28.0日であった。退院時の歩行は独歩1関節、T字杖3関節、片松葉杖2関節、両松葉杖1関節であった。合併症として、1例がポリ乳酸性スクリューの1本が抜けてきた為、術後1ヶ月で抜釘した。<BR>【考察】大腿骨頭壊死症の治療は、年齢が若年であることから早期に社会復帰可能となることも重要である。大腿骨頭表面置換術後の症例は、THA症例と同様にスケジュール通り早期に歩行可能で、退院時独歩やT字杖歩行まで可能であった。これは術前の股関節周囲筋力や歩行能力が保たれていること、手術が低侵襲であることが考えられる。合併症が生じると歩行機能の改善、社会復帰が遅くなるため、術後早期、大転子部の骨癒合が得られていない時期に、強力な外転運動などを行うことは合併症の誘発となる可能性がある。術前の筋力が保たれている症例は、積極的に筋力強化を行わなくても、早期に歩行機能の再獲得、社会復帰も可能であり、合併症を生じないように理学療法を行うことが必要と考えられた。<BR>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2005 (0), C0159-C0159, 2006
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680541773952
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- NII論文ID
- 110004994520
- 130004579152
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- NII書誌ID
- AN10146032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可