高齢者の筋力トレーニングにおける筋力増強効果の関連要因
説明
【目的】高齢期における筋力トレーニングは介護予防ならびに健康寿命延伸の観点からその効果が期待されている。本研究の目的は高齢者の筋力トレーニングについて筋力増強効果に関連する要因を探ることである。【対象】G県O町の転倒予防教室の参加者41名を対象とした。男性18名、女性23名で平均年齢は71.0±5.7歳であった。日常活動能力は老研式活動能力指標(13点満点)で11.9±1.4点のレベルであり、自覚的な健康状態はふつうまたは良好であった。【方法】転倒予防教室の一部として週2度の筋力トレーニングを3ヶ月間にわたり計24回行い、筋力増強効果に関連する要因を分析した。筋力トレーニングは膝伸展動作や股関節外転動作など「お年寄りのための安全な筋力トレーニング」(保健同人社)より抜粋した4種目でそれぞれ8回を1セットとして1度につき3セット行った。運動負荷には1kgの重すいバンドを利用した。筋力の評価は膝90度屈曲位での最大等尺性膝伸展筋力の体重比(%)(以下、膝伸展筋力)により行い、転倒予防教室の実施前、実施後において評価した。関連する要因として年齢、性別、体重および筋力トレーニング実施頻度を調査した。得られたデータから従属変数として転倒予防教室の実施前後における膝伸展筋力の変化を、独立変数として年齢、性別、体重、筋力トレーニング実施頻度および転倒予防教室の実施前の膝伸展筋力の5つを投入した重回帰分析を行った。なお、筋力トレーニング実施頻度は転倒予防教室への参加回数と自宅での筋力トレーニングの実施回数を合計した回数を転倒予防教室の実施回数である計24回を100%として換算した値とした。また、性別については女を0、男を1として扱った。分析における有意水準は5%未満とした。【結果】転倒予防教室実施前の体重は54.3±8.2kg、膝伸展筋力は48.7±16.3%であった。筋力トレーニング実施頻度は88.7±23.5%であり、転倒予防教室の実施後に膝伸展筋力は54.5±15.9%へと増加していた。膝伸展筋力の変化に対し5つの独立変数を投入した重回帰式はr=0.59(P=0.009)の有意な相関を示した。このうち有意な関連を示した独立変数は転倒予防教室の実施前の膝伸展筋力(標準回帰係数_-_0.53、P=0.002)および筋力トレーニング実施頻度(標準回帰係数0.39、P=0.012)であり、年齢、体重および性別は有意な関連を認めなかった。【考察】本研究で実施した週2度の頻度で1kgの負荷を用いて行う筋力トレーニングは安価かつ簡便であり、地域在住の高齢者を対象にした場合に比較的実施しやすい方法と思われる。このような方法で行う筋力トレーニングでは、実施前の膝伸展筋力が低いほうが筋力増強効果を得やすく、また、週2度の頻度を基準として自宅でのトレーニングを加えて多めに行ったほうが筋力増強効果をより高めることができると考えられた。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2002 (0), 857-857, 2003
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680541786624
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- NII論文ID
- 130004577561
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可