体幹運動の違いが外腹斜筋の筋積分値に及ぼす影響

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  • 外腹斜筋における筋線維方向の違いによる検討

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【はじめに】近年、体幹機能の重要性についての報告は多数認められ、特に脳血管障害などの中枢神経疾患患者における体幹へのアプローチの大切さは周知の通りである。また筋電図を用いた体幹筋の評価においても様々な報告がなされている。体幹前外側面の筋群は3層に配列しており、当初表面筋電図上では体幹筋群としての評価が限界とされてきた。1998年のNgらの報告により、表面筋電図おいて体幹前面筋群である内外腹斜筋の単独機能の評価が可能となった。著者らもそれらの報告をもとに、健常者を対象にいくつかの体幹運動に対する内外腹斜筋それぞれの筋活動について報告してきた。今回最表層である外腹斜筋の機能についてより詳しく知ることを目的とし、体幹運動に対し外腹斜筋の筋線維方向の違いによる筋積分値の変化について検討したので報告する。<BR>【対象と方法】対象は、健常男性7名、平均年齢は28.9歳、平均身長は170.0cmであった。まず被験者に背臥位をとらせ、筋電計ニューロパック(日本光電社)を用いて、外腹斜筋の筋積分値を10秒間、3回測定した。電極位置としてNgらの報告による第8肋骨下縁とその肋骨上2cmの斜行線維と、解剖学上外腹斜が単独で走行していると考えられる第10肋骨下縁とその肋骨上2cmの垂直線維に電極を配置した。次に背臥位にて体幹屈曲位を保持させた場合と、体幹回旋位を保持させた場合(それぞれMMT5レベル)の筋積分値を上記同様に測定した。また加えて側臥位での体幹側屈位(抗重力位)を保持させたときのそれぞれの外腹斜筋筋積分値を測定した。このとき背臥位での外腹斜筋(斜行線維、垂直線維)それぞれの筋積分値を1として、体幹屈曲位、回旋位および体幹側屈位の筋積分値相対値を求め、体幹運動の違いによるそれぞれの外腹斜筋筋線維の増加する割合(増加率)を比較した。<BR>【結果および考察】体幹回旋時には外腹斜筋斜行線維において垂直線維と比べ、筋積分値の増加率の増大を認めた。体幹側屈時では反対に外腹斜筋垂直線維において斜行線維と比べて筋積分値の増加率は増大した。なお体幹屈曲時には、外腹斜筋斜行線維と垂直線維の筋積分値に差異はなかった。P.Mデービスは多分節からの神経支配である腹直筋において、体幹運動の違いにより働く筋線維が変わってくると述べている。外腹斜筋では支配神経の分節の多さや体幹に存在する筋線維方向の多様さを考えると、体幹運動の違いにより働く筋線維の比率が変わってくることは十分考えられる。今回の外腹斜筋の筋線維の働く比率の違いは、回旋ではより斜行する線維が作用し、側屈においてはより垂直方向の線維が関与したと考えられた。これらのことから外腹斜筋の表面筋電図による評価では、運動方向の違いにより働く筋線維の割合が変わってくる可能性があり、運動方向を考慮して電極位置を検討していく必要性が示唆された。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680541832832
  • NII Article ID
    130004577592
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.a0020.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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