高齢者におけるフォワードランジの運動特性

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【はじめに】フォワードランジ(forward lunge:以下FL)は立位から片側下肢を大きく前方へ振り出す動作であり、歩行に比べて前方および下方への重心移動が大きく、下肢の運動機能を反映する指標であると考えられる。そこで今回我々は、壮年者および高齢者のFL動作の運動特性を明らかにするために動作分析を実施し、若干の知見を得たので報告する。<BR>【対象】体力測定に参加可能であった高齢者21名(男性2名・女性19名)、年齢50歳~83歳(平均69.3±10.8歳)を対象とした。対象者のうち65歳未満を壮年群7名、65 歳以上を高齢群14名の2群に分け比較検討した。<BR>【方法】被検者は両腕を組み、下肢を前方へ大きく振り出すFL動作を行い、踵から踵までの距離をステップ幅として計測した。被験者の肩峰、大転子、膝関節外側、足部外果、第五中足骨に反射指標を張り付け、側面からビデオカメラを用いて、振り出し側の接地から静止期までのFL動作を撮影した。撮影画像からビデオ式動作解析システム(ToMoCo-VM)を用いて15Hzのサンプリング周波数で解析し、下肢の関節運動を二次元的に分析した。同時に垂直跳びの跳躍高を測定し、FL動作との関連を検討した。<BR>2群間の比較にはMann-Whitmeyの検定を、各群のFL比(ステップ幅/身長)と垂直跳びとの相関関係についてはspearmanの相関係数を用いて検討し、有意水準はいずれも5%未満とした。<BR>【結果】壮年群と高齢群の比較<BR>1)高齢群のFL比(0.54±0.07)は、壮年群(0.68±0.04)に比べて有意に小さかった。<BR>2)高齢群の膝屈曲角度は接地時(18.2±7.2°)と静止期(58.1±23.7°)において、壮年群(32.9±9.9°)、(83.6±9.9°)に比べて有意に小さかった。<BR>3)高齢群の静止期における足背屈角度(-2.3±8.2°)は、壮年群(10.0±7.6°)に比べて有意に小さかった。<BR>4)高齢群の垂直跳びは16.8±5.9cm、壮年群の35.0±8.7cmに比べて有意に低く、高齢群ではFL比との間に有意な相関を認めた。(γ=0.70 p<0.01)<BR>【考察】FL比の減少により高齢群では重心移動の能力が低下していることが明らかになった。高齢群の接地から静止期までの膝屈曲角度が減少した要因として、振り出し側の大腿四頭筋などの抗重力筋による支持力の低下が推察された。高齢群の静止期における足関節背屈角度の低下は、関節の柔軟性と下腿の前傾制動に関与する足関節底屈筋力の低下要因と考えられた。膝および足関節の制動機能の低下は、垂直跳びに必要な抗重力筋の機能を反映することが示唆された。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680541834368
  • NII Article ID
    130004577599
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.a0038.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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