ラット呼吸筋におけるMyosin Heavy Chainの分析

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抄録

【目的】近年、喫煙や環境汚染、アレルギー過敏等の原因で気管支喘息や慢性気管支炎、肺気腫といった呼吸器疾患は増加傾向にあり、呼吸リハビリテーションの取り組みが盛んに行われている。今回、呼吸に関わる基礎的研究として、吸気筋である横隔膜や外肋間筋、呼気筋である内肋間筋や腹直筋などを採取し、筋線維タンパクの中で収縮特性と関連の深いMyosin Heavy Chain isoformsを明確にした。本研究で我々は各筋が呼吸機能における呼気・吸気に対応するMyosin Heavy Chain isoformsを発現するであろうと仮説を立てた。<BR>【方法】実験材料には9週齢のWistar系雄性ラット8匹を用いた。材料はネンブタールを腹腔内投与し、安楽死させ実験に供された。被検筋には右横隔膜 Costal部およびCrural部、外肋間筋、内肋間筋、胸傍肋間筋、腹直筋を使用した。横隔膜 Costal部に関しては薄い膜状筋であるため、さらに前、中、後の3部位に分けて分析した。Myosin Heavy Chainの分離はドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動法(以下SDS-PAGE)を行った。作製した筋原線維タンパク抽出液を1レーンあたり0.1μl流し、4°C、120Vに設定し、44―48時間の泳動を行った。泳動終了後、銀染色を施行し、MHC slow、2a、2d、2bの組成比を算出した。<BR>【結果】SDS-PAGEにて分離した各サンプルのMyosin Heavy Chain アイソフォーム以下の通りであった。横隔膜 Costal部ではMHC slow,18.1%;2a,24.9%;2d,48.6%;2b,8.4%、横隔膜Crural部ではMHC slow,27.3%;2a,27.3%;2d,45.0%;2b,0.4%、外肋間筋ではslow,2.0%;2a,6.3%;2d,13.9%;2b,77.8%、内肋間筋ではslow,0%;2a,7.7%;2d,29.1%;2b,63.1%、胸傍肋間筋ではslow,0%;2a,5.1%;2d,26.2%;2b,68.6%、腹直筋ではslow,0.9%;2a,3.3%;2d,14.9%;2b,80.9%であった。<BR>【考察】一般に呼吸筋は吸気筋と呼気筋に分けられる。今回、吸気筋である横隔膜、外肋間筋および呼気筋である内肋間筋、腹直筋のMyosin Heavy Chainを分析した。各筋において呼吸機能特性に応じた相対的Myosin Heavy Chain isoformsを発現するという仮説は立証されず、個々の筋において様々なパターンが観察された。特に吸気に関与する外肋間筋および呼気に関与する内肋間筋は呼吸において正反対の活動を行う筋であるが、類似したMyosin Heavy Chain isoformsを発現しており、呼吸以外にも姿勢保持や動作に関与している可能性も示唆される。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2003 (0), D0558-D0558, 2004

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680541838080
  • NII論文ID
    130004578344
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.d0558.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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