脊髄小脳変性症患者に対する高負荷バランストレーニングの考案

書誌事項

タイトル別名
  • Body Weight Supportと不安定面を利用したバランストレーニング

説明

【目的】<BR>脊髄小脳変性症(SCD)は、小脳や脊髄における神経細胞の退行変性による運動失調を主症候とした、難治性の慢性進行性疾患である。運動失調によるバランス障害に対しては、立位や四つ這い位でのバランストレーニングが従来から施行されている。しかし、バランストレーニングを施行する際、患者の恐怖感や転倒リスクの忌避のため、トレーニング課題の難易度を高くすることは困難であると考えられる。そこで、SCD患者に対し、危険なく難易度の高い(高負荷)バランストレーニングの施行を可能とするため、Body Weight Support(BWS)システムと不安定面を利用したバランストレーニングを考案した。考案したトレーニングが、SCD患者の歩行能力に及ぼす影響を検討するため、従来のバランストレーニングを施行したSCD患者の歩行能力と比較し、得られた知見について報告をする。<BR>【対象および方法】<BR>小脳性運動失調を主症候とする、SCD患者2症例。症例には、BWSシステムと不安定面を利用したバランストレーニングに関する内容を説明し、同意を得た。バランストレーニングは、粘弾性のあるマットを用いた不安定面上での前後方向へのステッピング練習を、左右下肢に対し5分間ずつ施行した。さらに、転倒を防止するため、BWSシステムを用いて体重免荷量0kgの状態で症例の身体をハーネスで支持した。なお、必要に応じてストレッチや筋力トレーニング、歩行トレーニングも並行して実施した。また、今回のBWSを利用した不安定面バランストレーニングの歩行能力への影響を検討するため、従来の立位や四つ這い位でのバランストレーニングを施行していた、小脳性運動失調を主症候とするSCD患者2症例の歩行能力の推移を対照データとした。なお、比較対象とした2症例に対しても、必要に応じてストレッチや筋力トレーニング、歩行トレーニングを並行して実施していた。トレーニング介入の頻度については、比較対照とした2症例を含む4症例とも週1回の頻度で実施し、歩行能力の評価には、歩行速度の測定を経時的に行った。<BR>【結果】<BR>BWSと不安定面を利用したバランストレーニングを施行した2症例には、3または7ヶ月間のトレーニング介入を行い、いずれも歩行速度が上昇する傾向が認められた。一方で、従来のバランストレーニングを施行した2症例では、4.5または8.5ヶ月間のトレーニング介入中に大きな変化は認められなかった。<BR>【考察】<BR>BWSと不安定床面を利用したバランストレーニングは、難易度の高い(高負荷)バランストレーニングを施行することができると考えられる。小脳性運動失調が主症候の症例では、バランス障害が顕著であるため、立位や四つ這い位での姿勢保持課題(負荷)よりも、高負荷のバランストレーニングを施行することで、より効果的に歩行機能の維持を図れる可能性が示唆された。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), B0227-B0227, 2006

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680541863680
  • NII論文ID
    130004579096
  • DOI
    10.14900/cjpt.2005.0.b0227.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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