高齢者に対する転倒予防の取り組み

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  • 可能運動強度別プログラム作成に向けて

抄録

【はじめに】高齢者の転倒は骨粗鬆症に基づいた脊椎骨折あるいは大腿骨頚部骨折を起こし、寝たきりの原因となりやすい。高齢者の体力や運動機能にも個人差があり、転倒予防の取り組みにおいては、それを考慮した計画立案が望まれる。【目的】当院転倒予防外来通院者の背景や身体特性、日常生活における活動量、運動機能評価の結果を比較検討し、可能運動強度別の高齢者に対する転倒予防のための介入方法を開発することである。【対象と方法】対象は転倒予防外来修了者とし、期間は平成13年11月より14年11月末までとして、その期間に修了したのは19名(女性18名、男性1名、平均年齢70.3±6.8歳)であった。方法は、整形外科医と内科医による全身チェック・検査(胸椎・腰椎のレントゲン検査、HOLOGIC社製QDR4500による腰椎・大腿骨頚部骨密度(BMD)測定、運動負荷試験を含む)の上で、初回と最終時に運動機能を評価し、初回以降2週間毎に全6回の生活・運動指導を行った。評価項目として、健脚度(10m全力歩行、最大一歩幅、40cm踏み台昇降)とバランス能力(Berg Balance Test 、他)等を用いた。データ処理は対応のあるt検定とウィルコクソン符号付順位和検定で行った。【結果】腰椎と大腿骨頚部での骨密度は各々平均0.79±0.12g/cm2、0.69±0.12g/cm2であった。胸椎・腰椎では、7名が変形性変化を伴った圧迫骨折を有しており、骨折を伴わないが変形性変化が認められた者が7名いた。下肢では変形性膝関節症が12名と多かった。 脳卒中後遺症患者が2名、何らかの心疾患のある者は7名であった。BMIは平均23.7±3.7、可能運動強度は2.2から10.2Metsと幅広く、平均5.6±8.5Metsであった。 可能運動強度の分布は2峰性を示しており、平均値で4±1.1Mets(14名。以下「低値群」)と10.1±0.1Mets(5名。以下「高値群」)の2群に分けられた。この2群間の比較では、高値群の方が若年でBMIも低かった。逆にBMDでは低値群の方がよく、高値群は0.70g/cm2未満であった。 日常生活では、身の回りの介助を要する者はいなかったが、一日のうち立位でいる時間は1から13時間であった。万歩計では、平均は一日あたり6292±4277歩であった。これを前述の2群で比較すると、高値群は低値群の2倍以上歩いていた。心理面では、転倒に対する不安のある者が4名であった。 初回と最終時の評価で有意に改善したのは最大一歩幅とBerg Balance Testの2つであった。(p<0.05)【考察】当院の転倒予防外来では、受診者を可能運動強度でグループ分けし、それぞれに適した基本プログラムを準備することが今後必要であると思われた。さらに、評価項目も、どこにポイントを絞るべきかをグループ別に分けて考えることが、個々のニーズと介入による成果の的確な把握につながると考えられた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680541880832
  • NII論文ID
    130004577546
  • DOI
    10.14900/cjpt.2002.0.843.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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