空気圧による部分荷重歩行

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  • 人工股関節置換術患者への試み

抄録

【目的】我々は立位で被検者の骨盤帯以下を密封し,下から空気圧を加えることで身体を持ち上げて部分荷重歩行させる方法を試行している.今回,トレッドミル歩行が可能な試作装置を用い,空気圧と部分荷重の関係および酸素摂取量との関係を検討することを目的として患者での測定を行った.【対象と方法】測定手順,内容,危険等に関して十分に説明し文書による同意を得た人工股関節置換術後患者女性5名(平均体重60.4 kg,平均身長156.0 cm,平均年齢50.2歳)を被検者とした.被検者には足圧計(アニマ製MP-100)と骨盤帯から大腿上部までの特殊シールを装着して立位をとらせ,体重の2/3および1/2の加圧量を決定した.装置内のトレッドミルで時速1.5 kmの全荷重歩行,2/3および1/2荷重設定での歩行をランダムに行わせ,心拍数と酸素摂取量(ミナト製RM-280)を測定した.各歩行間には5分間の休憩を入れた.足圧データは体重値で正規化して立脚期の最大足圧と平均足圧を算出した.測定値の等分散を確認後,重複測定分散分析と多重比較を行った.【結果】最大足圧は全荷重では体重の105.6 %,2/3荷重設定では73.0 %,1/2荷重設定では61.0 %であった.平均足圧はそれぞれ体重の69.2 %,49.3 %,40.6 %であった.最大足圧と平均足圧のいずれにおいても全荷重と2/3,および全荷重と1/2荷重設定での歩行の間に有意差を認めた(p<0.01).また2/3および1/2荷重設定では,足圧曲線は正常歩行のように2峰性を描きながら全体として低下した.心拍数はそれぞれ109.6,97.6,92.2 beats/minであり有意差を認めなかった.酸素摂取量はそれぞれ10.8,8.1,7.6 ml/kg/minであり, 2/3および1/2荷重設定では全荷重に比べて有意に低かった(それぞれp<0.05,p<0.01).【考察】測定結果は空気圧によって部分荷重(免荷)機能が得られることを示している.立位で圧を設定したために足圧実測値は設定をわずかに上回ったが,より正確な部分荷重のためには歩行中の加圧調整が有効であると考えられる.今回,2峰性足圧曲線パターンを維持したまま足圧が低下することが確認された.これは松葉杖歩行や水中歩行にない特徴であり,部分荷重設定では足底が受ける反力は正常パターンに近いことを示している.またこの歩行では酸素摂取量が減少することから消費エネルギー量が少なく生体への負担は小さいと推察される.これまで部分荷重歩行は患者の主観に委ねることが多かったが,本方法は水中歩行やサスペンション歩行と並んで客観的に荷重制御できる方法であると推察される.被検者数を増やすことと,この歩行が歩行学習に及ぼす影響の検討等は今後の課題である.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680541940864
  • NII論文ID
    130004576866
  • DOI
    10.14900/cjpt.2002.0.230.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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