ポリオ後症候群の発症状況と理学療法の課題

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ポリオ後症候群(PPS:Post-Polio Syndrome)とは、小児期にポリオ(急性灰白脊髄炎:いわゆる小児まひ)に罹患し、いったん十分に機能回復して通常の社会生活を過ごしていた成人に、40歳から50歳代に新たに現れる筋力低下、筋萎縮、疲労、筋痛を主訴とし、寒冷耐性の低下、関節痛、呼吸機能障害、嚥下障害、睡眠障害、認知障害などの多彩な症状を伴う種々の機能障害の総称である。日本で1949年から1961年にポリオが流行し、多くの犠牲者と後遺症を残した。累積患者数は約37,000人である。生ワクチンの開発により世界中で疾病予防が徹底され、日本での平成9年以降の発生は報告されていない。PPSの発生頻度は、Ramlowら(1992)の研究では24.9%、佐々木.横串ら(1998)の研究では26.6%である。今後、加齢に伴い症状が顕在化してくると思われるが近年の報告は少なくその実態は明らかでない。ポリオが大流行した米国では1980年以降その取り組みが行われたが、日本での取り組みは乏しい。運動系と感覚系のみならず、広範な心身機能障害を呈する病態であることが認識されているが、実態把握と原因解明への努力は不十分である。そこで今回、新潟県におけるPPSの実態調査をおこない、その現状を把握し問題解決の方策を探ろうと考えた。<BR> 【目的】新潟県におけるPPSの実態を知る。【対象】1959年から1969年に新潟県立はまぐみ小児療育センターを受診しポリオと診断・加療されたもの405名中、アンケートに回答したもの119名である。【方法】横断研究、アンケート調査、調査内容:診断基準としてHalsteadの診断基準を採用し、臨床症状の普通でない疲労、関節痛、筋肉痛、まひ側または非まひ側の新たな筋力低下、寒さに対する耐性低下、新たな筋萎縮のうち、2つ以上の症状があるものをPPSとし、その有症率を調査した。【結果】対象者の性別は男性63名、女性56名の119名であった。内訳は、年齢:44-74歳、平均54.1±4.9歳、仕事:就業者69名、家事36名、その他14名であった。PPSの有症率は疲労感60%、関節痛44%、筋肉痛33%、筋力低下57%、耐性低下33%、筋萎縮22%であった。このポストポリオ症状を2つ以上有し、PPSと診断されるものは73名(61.3%)であった。【考察】PPSの有病率についての本研究結果は先行研究(上記)よりも非常に高い数値を示した。これは、(1)対象者が先行研究よりも明らかに高年齢化していること、(2)PPSがポリオ罹患者に周知され、体調不良をポリオ罹患に起因するものとして認識できるようになったことが要因と考えられる。PPSに対するリハビリテーションのポイントとして過用の防止、廃用の予防、低負荷反復運動、生活習慣の再構築などがあげられているがその実践のシステムがどの程度浸透しているかは不明である。PPSの発症は患者の加齢とともに今後ますます顕在化してくるであろう。現状を明確にしPPSに対する早急なリハビリテーションの方策を考える必要がある。

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