10mコースを用いた6分間歩行テストは持久力評価方法として妥当であるか
書誌事項
- タイトル別名
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- ―下肢整形疾患を有する高齢者における検討―
説明
【目的】6分間歩行テスト(6MWT)は,安全でかつ簡便に行うことが可能な平地歩行テストであり,全身持久力をよく反映すると報告されている.しかし,下肢整形疾患を有する患者を対象とした先行研究は少ない.また,米国胸部医学会による6MWTのガイドラインではコース長は30mとされているが,実際の臨床場面では設定困難な場合も多い.そこで本研究では,10mという比較的設定が容易な長さのコースで下肢整形疾患を有する高齢者と有さない高齢者を対象として6MWTを行い,持久力評価方法としての妥当性を検討することを目的とした. <BR>【方法】対象は当院に外来または入院中の70歳以上の高齢患者30名で,そのうち下肢疾患群は17名(年齢80.9±6.4歳,男性2名,女性15名)で,対照群は13名(年齢75.8±3.4歳,男性6名,女性7名)であった.対象は独歩または杖歩行が可能なものとした.6MWTは三角コーンで規定した10mのコースを周回することで急激な方向転換を避けた.6MWTは2回実施し,1回目の測定後,1週間以内の同一時間帯に2回目の測定を行った.なお,測定値は2回目の結果を用いた.テスト前に座位で安静時心拍数を記録し,テスト前後に修正Borg scaleで下肢疲労感と呼吸困難感を,さらにVisual Analog Scale(VAS)で下肢の疼痛を聴取し,テスト中の経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)と最高心拍数(Peak HR)をパルスオキシメータ(マイクロ2:フクダ電子社製)によって記録した.統計学的分析は,各群内での測定値の比較には対応のあるt検定およびWilcoxon符号付順位和検定を,また群間の比較には対応のないt検定を行った(有意水準5%). <BR>【結果および考察】両群とも1回目と2回目の測定の総歩行距離には有意差がなく,再現性は良好であった.6MWTの総歩行距離は下肢疾患群が244.0±74.9mで対照群は298.2±73.7mであった.20mコースで6MWTを行った先行研究では総歩行距離が約490mであり,今回はこれよりも短い距離となった.また,測定前後でVASの変化は両群ともに有意差はなく,下肢疼痛は総歩行距離にほとんど影響を与えないことがわかった.さらに,自覚的運動強度としてのBorg scaleによる下肢疲労感および呼吸困難感は,下肢疾患群においては有意に増加したが,対照群は変化がなかった.また,両群とも心拍数は有意に上昇し,SpO2は有意に減少したが,年齢より算出した予測最大心拍数に対するPeak HRの割合は,下肢疾患群が81.4±14.5%,対照群が73.4±12.4%と差がみられた.このことから,10mコースを用いた6MWTは下肢整形疾患を有する高齢者においては下肢や心肺系に比較的良好な負荷をかけることが可能であり,全身持久力の評価方法として妥当であるということがわかった.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2004 (0), C0140-C0140, 2005
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680541987584
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- NII論文ID
- 130005012561
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可