シリコーンライナーを用いた術直後義肢装着法における術後の断端管理

説明

【はじめに】<BR>当院整形外科では、術前計画のできる大腿切断に対しシリコーンライナー;Icelandic Roll on Silicone Socket(以下、ICEROSS)を用いた術直後義肢装着法を行っている。その具体的な方法等は第21回、第22回国立大学理学療法士学会及び第18回東京都理学療法士学会で紹介し、その利点としてICEROSSを用いることで従来のリジッドドレッシングによる術直後義肢装着法(以下、従来法)と比較し術後の断端管理が容易に行え、高度な技術を要さずに良好な断端を獲得できることを挙げた。すなわちICEROSSを用いた術直後義肢装着法は、従来法の利点を生かしつつ、従来法の欠点を補える有益な方法であると考えられる。一方、抜糸が済むまでの期間は、断端に水疱が形成されることが多かった。そこで、課題として水疱の発生機序についての考察及び予防対策の検討を挙げた。今回、新たな一症例(右大腿切断)の経験を通し、水疱の発生機序についての考察及び予防対策の検討を行ったので報告する。<BR>【施行した対策】<BR>水疱予防の観点から以下のような対策をとった。過去の症例経験から、水泡ができやすい部位(ICEROSSの大腿近位端が皮膚に接触する部分)にはあらかじめ布(ストッキネット)をあてて保護した。挿入する布やガーゼは、厚すぎると厚みの分だけ周囲の皮膚に対して段差が生じ、そこでの摩擦がその周囲に新たな水疱を発生させる原因になると仮説を立て、薄いものを用いた。術後の創消毒は頻度を増やし、術後4日、7日、11日に施行した。創消毒時にはソケットを外すことになるが、外している時間が長いと浮腫が生じてソケットの再装着が困難になるので消毒は手際よく短時間を心掛けた。頻回のソケット着脱を想定して、術直後に巻くキャストソケットは緩めに巻き、緩すぎる場合はICEROSSとキャストソケットの間に挿入する断端袋で調節することした。<BR>【経過】<BR>理学療法は術3日目から継続して施行できた。水疱は術7日目に大腿近位前外側に直径1cm程のもの2個、術11日目に大腿近位後外側に直径1cmと1.5cm程のもの1個づつを生じただけで、過去の症例の水疱と比較し大きさも数も減少した。創の治癒も良好で術後14日に全抜糸となった。水疱は褥瘡治療にも用いられている創傷被覆材等で処置することにより術17日目には治癒した。皮膚・形状とも良好といえる断端を獲得でき、スムーズに本格的な義足歩行練習へと移行できた。<BR>【考察】<BR>今回の経験より、水疱の発生機序としては、体動時に繰り返されるICEROSSと断端皮膚との間に起こる摩擦が考えられた。水疱予防対策としても今回施行した対策は大筋有効であったと考えられる。また、一連の処置には医師、看護師、義肢装具士らとの連携、チームワークが不可欠であった。水疱を皆無にすべく予防対策が今後の課題である。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2004 (0), C0342-C0342, 2005

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680542036352
  • NII論文ID
    130005012605
  • DOI
    10.14900/cjpt.2004.0.c0342.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ