握力と上肢主要筋力との関連性

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抄録

【はじめに】握力は上肢全体の筋力を代表する粗大筋力検査として、頻繁に臨床で使用されている。しかし、握力に関与する筋は主として前腕屈筋群および手内筋群であり、厳密には前腕の局所的な筋力を測定しているにすぎないと思える。そこで今回、握力と肩及び肘関節の主要筋力との関連性を検討した。さらに、一定期間の握力強化トレーニングによって、握力値や上肢の主要筋力が、どのように変化するのかを検討したので報告する。<BR>【方法】対象は、健常成人47名の利き手47肢、平均年齢21.8±2.2歳であり、トレーニングの効果判定の対象は健常成人9名の18肢、平均年齢22.2±2.6歳であった。握力測定には、デジタル式握力計(竹井機器工業製)を使用し、上肢主要筋力測定には、ハンドヘルドダイナモメーターを使用した。測定筋は、肩の屈筋群、伸筋群、外転筋群及び上腕二頭筋、上腕三頭筋であり、ダニエルスらの徒手筋力検査の測定方法を用い等尺性最大筋力で評価した。握力、上肢主要筋力測定は、すべて2回測定し最大値を求め、測定の間には疲労感のないことを確認し行った。統計処理には、ピアソンの相関係数を用いた。トレーニングは、指定したハンドグリップを1日6回3セットで週5回、4週間行った。握力及び上肢筋力をトレーニング前後に測定し、対応のあるt検定で検討した。<BR>【結果】握力と各筋との相関係数は、上腕二頭筋(0.52、p<0.01)と、肩関節屈筋群(0.37、p<0.05)とに有意な正の相関性が認められたが、その他の上腕三頭筋、肩関節伸筋群、肩関節外転筋群との間には、有意な相関が認められなかった。一方、肩関節屈筋群と握力及び今回測定した全ての上肢筋力との間に有意な正の相関が認められた。また、トレーニング前後の比較では、握力のみ有意な差が認められ他の筋・筋群には有意な差が認められなかった。<BR>【考察】握力は上肢の静的筋力を代表するものとして古くから一般的に測定されている。しかし、今回の結果から、握力と相関が認められたのは、上腕二頭筋筋力と肩関節屈筋群の筋力のみであり、その他の上肢筋力とは、明らかな相関性が認められなかった。一方、肩の屈筋筋力は、今回測定した全ての肩及び肘関節の主要筋力との間に有意な相関性が認められた。これらのことから、握力よりも上肢の多くの筋力と相関がある肩関節屈筋群の筋力を測定することの方が、上肢の粗大筋力検査としては、より有効であるように思えた。  <BR>握力計が、現在のように広く一般的に測定されている理由として、測定が容易で、労力をあまり必要とせず、短時間に結果がわかるといった実用面での利点によると言われている。またその他に、数値化することで、客観的な評価が可能であるためと考える。今後は、肩関節屈筋群の筋力測定を客観的に定量化できる測定方法の確立が課題である。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2003 (0), A0311-A0311, 2004

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680542103296
  • NII論文ID
    130004577706
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.a0311.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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