立位での大腿挙上運動における骨盤後傾のリズム

Description

【背景及び目的】<BR> 背臥位での大腿挙上運動では、骨盤と大腿が一定の関係(以下、骨盤大腿リズム)で動くことが明らかにされている(小川ら,1997 , 1999)。また、骨盤大腿リズムが運動の速度変化に依存せずに存在することが確認されている。しかし、先行研究は全て背臥位で行われ、他の姿勢でどのようなリズムで運動が生じるかは明らかでない。骨盤大腿リズムの存在は、中枢神経系が制御する運動のパラメーター数を減少させていることを予想させるが、その場合には他の姿勢でも同様な骨盤大腿リズムが生じるはずである。そこで、本研究は立位での大腿挙上運動における骨盤大腿リズムの存在を確認することを目的とした。<BR>【方法】<BR>対象は健常男性8名、女性2名(平均年齢27.6歳±3.8歳)。被験者は左右に配置された2本の四点支持杖を把持した立位で、膝関節屈曲(角度は自由とした)を伴う右大腿挙上運動を行った。運動課題は股関節最大屈曲に達するまでの自動運動とし、運動の速さは被験者にとって快適な速さとした。測定機器は三次元動作解析装置(PEAK社製Motus32)を用いた。マーカーの付着部位は両側上後腸骨棘を結んだ線の中点(CPSIS)および左右の肩峰、上前腸骨棘(ASIS)、大転子、外側膝関節裂隙(K)とした(合計9点)。大腿挙上角度は大転子と膝関節を結ぶ線から、骨盤後傾は両ASISの中点とCPSISを結ぶ線から求めた。正味の股関節屈曲角度は両者の差分とした。<BR>【結果及び考察】<BR> 立位における最大大腿挙上角度は平均97.1°±12°、矢状面内での骨盤の最大後傾角度は平均26.5°±8.5°、正味の股関節屈曲角度は平均70.6°±9.5°となった。先行研究(前出)と比較すると背臥位に比べ大腿挙上角度は小さく、骨盤の後傾運動が大きくなっている。<BR> 骨盤は運動開始直後から後傾方向へ動き、背臥位で認められた初期の前傾運動は生じなかった。大腿挙上角度10°ごとの骨盤後傾運動を見ると、10°以降50°に至るまで、股関節屈曲5°に対し骨盤後傾1°の割合であり、その関係は直線的であった。50°を過ぎると、大腿挙上運動角度に対する骨盤後傾運動の割合が徐々に増していく傾向が認められた。また、背臥位での股関節屈曲では横断面内での回旋運動が明確に認められたが(小川ら,1997)、本研究では平均0.4°±4.7°であり、立位では横断面内の回旋運動は起こらないことが確認された。<BR>本研究でも骨盤大腿リズムの存在が確認され、立位においても大腿挙上運動における骨盤後傾と股関節屈曲運動の不変関係が明らかとなった。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680542107008
  • NII Article ID
    130004577712
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.a0322.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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