10m歩行時間と転倒リスクの関係について
説明
【はじめに】<BR>転倒リスクと内的要因(身体機能の低下、精神的疾患の合併)、外的要因(生活環境)の関連についての報告は多数あるが、評価は多岐に渡り、検査時間と特別な機器と場所を必要としている.東京都老人総合研究所、鈴木らによる比較的健康な地域高齢者を対象とした転倒発生に関連する5年間の追跡研究では、10m自由歩行時間が8.6秒以上(歩行速度1.16m/sec以内)の者は複数回転倒者との報告がある.また、運動器不安定症の機能評価基準として用いられる開眼片脚起立時間15秒未満の者は転倒リスクが高まった状態にあるとされている.しかし、これらの指標を当所利用者に用いたところ、転倒経験がない屋内歩行自立レベルの者でさえも転倒ハイリスク者に該当する.そのため当所利用者を対象とした転倒リスクの判定には前述の指標を参考にした別の指標作成が必要になると考え、今回検者間で誤差が少なく簡便で汎用できる可能性が高い評価に着目し、転倒リスクとの関連について検証した.<BR>【対象】<BR>2008年4月から2008年5月に補装具の有無に関わらず、手放し開脚立位20秒以上可能かつ10m歩行を見守りレベル以上で遂行可能であり本研究に同意を得られた55名とした.<BR>【方法】<BR>転倒記録とスタッフへの聞き取りによって過去1年間の転倒発生の有無を調査し、55名を転倒群(以下F群)と非転倒群(以下NF群)に分け、2群間の年齢、10m歩行時間、HDS-R、閉脚立位について比較検討した.10m歩行時間(自由歩行)は前後に3mの助走路を設けて計測し、閉脚立位は開眼手放しで20秒以上保持できる者を可能とした.統計学的処理は年齢、HDS-R、10m歩行時間はMann-WhitneyのU検定、閉脚立位は2サンプル比率検定を用い有意水準はP<0.05とした.<BR>【結果】<BR>F群は25名、NF群は30名であった.年齢(F群:80±7.6歳、NF群:77±9.5歳)、HDS-R(F群:17±7.7点、NF群:19±7.4点)は2群間で有意差はなかった.10m歩行時間(F群中央値:29秒、NF群中央値:15秒)はNF群が有意に短かった(P<0.05).閉脚立位(F群:64%、NF群:96%)はNF群が有意に可能であった(P<0.05).<BR>【考察】<BR>10m歩行時間、閉脚立位は簡便な評価として転倒リスクの指標となることが示唆された.しかし、HDS-Rは2群間で有意差がないことから転倒リスクの指標として用いるには注意が必要である.介護保険利用者においても歩行能力の評価と転倒経験の確認は、転倒ハイリスク者を把握する上で重要となることが本研究からも示された.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2008 (0), A3P1168-A3P1168, 2009
公益社団法人 日本理学療法士協会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680542353152
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- NII論文ID
- 130004580015
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可